第5章 黒猫の足跡、2つに並ぶ
「先輩、ボール空気抜けてるんですけど空気入れないっスか!?」
「あぁ、私やっとくから犬岡は練習してていいよー。」
「アザっす!」
次から次へとやってくる部員達。忙しいわ本当。もう一人位マネージャー居たらいいのに。クロから受け取ったボトルを洗い、また新しいドリンクを作る。そうこうしてるうちにとっぷりと日が暮れ部活は終了の時間を迎えた。
猫又監督と直井コーチが、部員に集合を掛けゆっくりと猫又監督が口を開いた。
「えー、明日は梟谷との練習試合だから、少し早めに来るように。今日は自主練も禁止。それから、ゴールデンウィークの予定が決まった。」
部員達がゴクリと息を飲む。これから部活三昧の約1週間のスケジュールが発表されるからだ。私は既に知ってるから、ドキドキはしないけど。
「3日から6日に掛けて、レギュラーのメンバーは宮城に遠征をする事になった。3日から5日までは未定だが…6日は烏野と練習試合が決まってる。気を引き締めろよ。」
「「「ハイッ!!」」」
「それじゃあ解散。ゆっくり体休めなさい。」
それだけ残すと監督とコーチは体育館を後にした。途端、レギュラーのメンバー達は嬉しそうにガッツポーズをし始める。
「っしゃ!練習試合!!」
「しかも烏野だぜ?楽しみだなー。」
「からすの、って強いんスか?夜久さーん。」
「元々は強かった、ウチと同じだな。昔は練習試合とかしてたらしいけど、俺達ですら初めてだよ。」
「へー!俺も行きてー!!」
「リエーフ、お前はレギュラーじゃねーから連れていかねーぞ?こっちで留守番。」
「えー!!?そんなぁ…!連れてってくださいよ、黒尾さん!」
「うるせえ、駄々こねて無いでさっさと片付けろ!行きたきゃ強くなれ!」
クロに一喝されリエーフはぶすくれたまま、片付けを始めた。私もサッサとボトル片付けよ。飲み終わってるボトルもそうでないものも回収して、全部水道でキレーに洗う。タオルは洗ってる時間ないし帰って洗おう。
明日はついに梟谷と試合か…。楽しみだな。今年入って初だ。練習試合。鼻歌交じりにボトルを洗ってると、研磨が水道裏からひょっこり顔を出した。
「…、ボトル1本忘れてる。」
「あ、研磨。ありがとう!」