第5章 黒猫の足跡、2つに並ぶ
「ん…。」
わざわざ持ってきたボトルを受け取りそれも綺麗に洗い流す。研磨はそれを猫のようにただジーッと見つめていた。
「…クロとの生活はどう?」
「うーん、思ってたより普通。」
「……おれも今度泊まりに行っていい?」
「え、当たり前じゃん!今日来る!?」
「いや、何も持ってきてないし。明日試合だし。」
「残念…。」
「カゴ持つよ、貸して。」
「ありがとー!」
なんか今日は研磨が、優しい。いや常に結構優しいんだけど。2人でマネージャーの部室へ向かう。カラカラとカゴの中身が揺れる。
「研磨さー、また髪染めないの?めっちゃプリンじゃん。」
「いいよ、めんどくさいし。」
「折角綺麗な髪なのにもったいないな。女子が羨むぞこんなサラサラ髪。」
「そう?もサラサラでしょ。」
「そうかな!?研磨に褒められると嬉しい!」
「別に…。はい、ココまで。」
「ありがと!」
マネ室前で渡されたカゴを受け取り研磨と別れてボトルを片付け、ついでにTシャツから制服に着替え大きく伸びをしてから、部屋を出る。ふと扉横に感じる影に顔を向けると、クロが当然のように立っていた。
「わざわざ待ってたの?」
「まァ、昨日の事もありますカラ?流石に心配だし、そもそも家一緒でしょうが。」
「優男ー。」
「僕は元々誰にでも優しいデスヨ?」
「あ、はい。」
「なにもそんな目しなくても。ほら、帰るぞ。」
「うん、帰ろ!お腹空いたー。」
「晩飯何?」
「生姜焼き。朝下味付けておいたから焼くだけだけど、少し時間掛かるから作ってる間に風呂入っちゃってよ。」
「そうするわ。」
*黒猫の足跡、2つに並ぶ*
(宮城行ったらなんか美味しいもん食べたいなー、牛タンとか)
(お前そういえば向こう行ったら家族んとこ泊まんの?)
(うーん、近かったらそうするかも)