第4章 黒猫の足跡、体育館に消える
頬が引き攣るのが自分でも分かる。思わず1歩後ずさりすると背中に壁か何かが当たる感覚。私より1回り2回り大きい男の体だ。その男の腕が私の手首をいとも簡単に掴みあげた。
「は…離せって!お前ら後輩にいいように使われて馬鹿なの!?」
「うるせぇ!どうせバレー部のヤツらとヤッてんだろ!?俺らの相手くらい余裕だろ!」
「ふざけんなあんな体力馬鹿共の相手なんて出来るか…ンむっ!!」
「ハイハイ、少し静かにしてねー、誰か来たら困るから。」
複数の男の手が私の口を塞ぎ、手首をハンカチかなにかの布で縛られる。いつの間にか女の子は居ないし、体育館倉庫の扉も閉まってる。…流石にこれは想像して無かった。ちょっとエロ漫画とかでありそうな、けれど自分には無縁。そう思ってたのに。
「見た目だけはホント可愛いのにな…。」
「これは役得だわ…乗って良かった。」
「とりあえず脱がそうぜ。」
こんな事ならクロや夜久ちゃんの忠告、聞いておくんだったな。逃げる事も出来ず、ただ迫る掌に覚悟を決めた時だった。なにやら外が騒がしい。
「……が中に居るんだろ?早く開けなさいよ。」
「いッ…居ないわよ!何言ってるの!?」
「悪いけど君からの手紙、俺達も読んでるから。それと君たちの会話も録音済。」
「そんな…だって…夜久先輩…!」
女の子と、この声は夜久ちゃんと、クロ?部活行けって言ったのに…!
男達にも外の声が聞こえたのか、私に伸ばされた手は止まりざわざわと狼狽え始める。
「オイ、この声バレー部の…。」
「やばくね…逃げる?」
「どっから?」
ガンッ、と扉を蹴り付けるような大きな音。私含め男達の肩がびくりと跳ね上がった。
「……まさかウチの可愛いマネチャンに手、出してないよな?今ここ開けるから逃げんなよ。」
ドスの効いた低い声。…あぁ、コレは切れてるわ。
宣言通り、南京錠が解かれる音がしたかと思うとゆっくりと開いた扉。薄暗かった体育館倉庫に差し込む光と、人影が2つ。夜久ちゃんは持っていたスマホで中の光景を即座に写真に収めた。何でだよ。
「お前バスケ部のエースだったよな?お前はサッカー部のだっけ。もしこの画像、先生に見せたらお前らどんな処分受けるだろうな?」