第4章 黒猫の足跡、体育館に消える
手首を捕まれ問答無用で教室から連れ出される。無言のまま連れて行かれたのは何時も使ってる体育館、の、横。壁際へ立たされたかと思えば顔の両側にクロの腕がベッタリくっつけられて逃げ道を失う。やけに距離が近い。何事かと顔を上げると、ちょっと鋭いクロの眼差し。…あ、怒ってんなコレ。
「何で怒ってんの?」
「授業中夜久と何コソコソ話してた?」
「放課後危ないから行くなって話をしてた。」
「耳打ちは?」
「心配してくれたからありがとう、って言っただけ。」
「……。」
無言で唇をへの字に曲げたクロ。面白い顔してんな。今ここでこの顔写真撮ったりしたらやっぱ怒られるかな?そんなくだらない事を考えていたら頭の横に付いていた腕は下がり背と腰に添えられ抱き寄せられた。
「何、苦しいんだけど。」
「…ああいう事されるとマジで妬くんだって。」
「あのさぁ…夜久ちゃんは部員だよ?それなりに仲良くて当たり前。」
「それでも傍から見たらイチャイチャしてるように見えるんだよ。」
「そんなに心配しなくても私にとって一番特別なのはクロだけど。」
「…そういう事いきなり言うよねお前。」
相変わらず寝癖の付きまくった頭を撫でてやる。しばらくクロの頭を撫でるだけの無言が続く。…お腹空いた。
「ねえクロ、お腹空いた。」
「俺はもうちょいお前とイチャイチャしたい。」
「壁としてろよ。」
「飴と鞭の振り幅もうちょいどうにかなんないの?離して欲しかったら頬にキスの一つでもして下さい。」
「は?それお前がして欲しいだけだろ。」
「賢いな。わかってんなら早く、飯食う時間マジで無くなるぜ?」
「…………ほんまめんどい男やな!」
ニマニマ腹立つ笑顔浮かべるクロ。埒があかない。このままじゃマジで昼ご飯を食べ損ねるという危惧もあり、襟元を掴んで無理矢理引き寄せ、頬に口付けた。
「…背伸びするとかもうちょっとこう…。」
「キスさせたヤツが文句言うなよ。ほら、戻るよ!」
「へーい。」
「そのにやけきった顔どうにかしてマジで。」
「無理。」
教室に戻り、今更どっかで食べる余裕は時間的に無く仕方なしに机で弁当を広げた。夜久ちゃんの席が空いてるのをいい事に隣にはクロが座ってる。
それから放課後の部活の事を話しつつ昼食を食べ進め、退屈な授業が終わった。