第14章 三毛猫の独白。クロ猫の噛み跡
研磨を連れて合宿所に戻ると、両親は既に帰っていてみんなも準備を終わらせていた。いそいそと支度する彼を連れてみんなは試合に行く。残された私は早速キッチンに立った。
「えーっと…1日目は生姜焼き…2日目は唐揚げ…3日目はカツ丼だな!」
冷蔵庫の中はたった3日分にも関わらずパンパンだった。副菜とか諸々作るとなるとこれでもギリギリかな。
私は家から持ってきたエプロンを身に付けジャージの腕を捲る。よっしゃ、やるか〜!
調理を始めて数時間。晩御飯の生姜焼きとポテトサラダ、わかめの味噌汁を作りちょこちょこ休憩を挟みつつ明日以降の下味や作り置きを終えたところでガヤガヤと声が聞こえてきた。お、戻って来たな。
「あ〜めっちゃ腹減る匂いしてる!」
「腹減ったァ!」
いの一番に食堂に入って来たのは山本と犬岡だった。試合後なのに元気が有り余っててよろしい事だ。
「お疲れ、勝った?」
「かっ……勝ちました!!」
「良かった良かった!じゃあさっさと手洗って来なー。」
「「アッス!」」
2人は敬礼するなり今度は手洗い場まで駆けて行った。部員も戻って来たし食事の準備を始めようと鍋やフライパンに火をかける。
「荷物置いて手洗った人から箸持ってって!後ご飯は自分が食べる量よそって!」
「おぉー、すごい量だな。もお疲れ。」
「動いたらしっかり食べる!筋肉つけて貰わないとね。海くんもお疲れ様。そこのポテトサラダの大皿持ってって貰っていい?」
「了解。」
「研磨、取り分け皿出して!」
「はぁーい…。」
「夜久ちゃん、麦茶冷やしてあるからテーブルにピッチャーごと持ってってくれる?」
「任せとけ!」
戻って来た部員たちを使って夕飯の支度を進める。全員分の皿やご飯が行き渡った所で漸く私も席に着く。隣にはクロ、正面には海くん、夜久ちゃん。こういう時自然と学年で集まりがちだよなぁ、なんて思いながら皆でパン、と手を合わせた。
「「「いただきまーす!!」」」
「明日って青城とだっけ。強豪なんだろ?」
「うん、個々のスキルはもちろんだけどずば抜けて凄いのはセッターかな。味方も敵も良く見てるしサーブも強烈。」
「へー!俺に打ってくんねぇかな、取りてぇ!」
「夜久ちゃんなら取れるよ、一発目から最高に綺麗に上げてビビらせちゃえ!」