第2章 雪だるまと冒険家のお話
「はい、どーぞ」
そうこうしている内に彼が戻ってきて、土器で出来たようなコップに水が入ったものを俺にくれた。どうもと受け取ってコップを覗き込むと、透明な液体が入っていた。臭いもしないが、これが水かどうか見ただけでは分からない。ただ手にしたコップがとても冷たかった。
「飲まないの?」
と彼に言われ、俺はここで断ったら何されるのか分からないと、思い切ってそれを飲むことにした。ヒヤリと冷たい水は、今まで雪山を歩いてきた俺にとっては寒いくらいだったが、身体中がこれを欲していたのだと思い始めた時には、コップの水をあっという間に飲み干していた。
「……美味い」
ただの水がこんなに美味いとは思わなかった。苦味もなく飲みやすい彼が持ってきた地下水は、冷たい以外は今まで飲んできたどの飲み物より美味かったのだ。この水で酒を作ったら美味そうだ。
「良かった〜。人間さんの口に合って良かった」と彼はホッとした様子から、思いついたようにこう言葉を続けた。「あ、まだ名乗ってなかったですよね。僕はおらふくん。雪だるまなんやで♪」
そう自己紹介してくれたので、俺も名乗って今までの話をすることにした。古代都市を探してここまで来たこと、見つからず帰ろうとしたが帰り道が分からなくなったこと、そして、食べ物がなくて困ったこと。
すると、とても雪だるまには見えない人間っぽいおらふくんが、だったらこれを、とグロウベリーの実を出してきた。なるほど、洞窟の中でもほんのりと明るいここは、天井からぶら下がったグロウベリーの実があるからだ。
「人間さんってこれ食べれるんだっけ?」
と言っておらふくんがグロウベリーの実を渡してきたので、食べられますと答えて受け取った。正直、腹を満たすには少々小さ過ぎたが、何も食べられないよりいいと思うことにした。
「それで、おらふくんはどうしてここに家を?」