第6章 木曜日
次の日、私はまた研究所に出勤すると、研究員たちの人だかりが出来ていた。どうしたのかと話を聞くと、ある研究員の一人が、データを研究所外に持ち出したからクビになったから埋め合わせが大変なんだ、とのことだった。
やっぱり、ここには不審な何かがあるのだ。
私はクビになった人物の接触を試みようと思ったが、もう研究所にはいないとのことでそれは出来なかった。ただ、名前だけは判明した。時田カオルという男性らしい。
私はこっそりメモを残しながら、まずはキノコ人のお世話を、と向かった部屋は冷蔵室だった。
キノコ人はある程度どんな環境下でも生きていくことは可能らしいが、これから会うキノコ人は冷気を好む傾向にあるらしい。なので私は防寒着を羽織ってそのキノコ人の部屋に入った。
「初めまして、おらふさん」
「あ、また違う人間さんや〜、こんちゃっちゃ♪」
今まで出会ってきたキノコ人と違い、おらふキノコ人はちょっと人懐っこい感じがした。見た目はブカブカとした薄い上着を羽織った男性のようだが、その頭に二つ生えている青いキノコが人間ではないことを示していた。
「私はサツキ。これから貴方のお世話をしに来たの」
「ああ、そうなんや。よろしくね〜」
私が話しかけると独特な訛りがある返事をするおらふキノコ人。元々キノコ人はこんな感じで喋っていたのだろうか。
「昨日来た人間さん、大丈夫やった?」
考え込んでいると、おらふキノコ人が唐突にそう切り出した。なんのことかと訊ねると、カオルと名乗る人間から、色々と話を聞かれたらしい。