第5章 水曜日
三体目のキノコ人の飼育へ行く前に、私は資料室で更なるキノコ人の詳細を調べた。
しかし情報は少なく、キノコのような人間がいた、という過去の症例も見つからなかった。ただ、近場の森が火事になった、という新聞の切り抜きがファイルに挟まっていたのは見かけた。キノコ人たちと関係があるのだろうか。
それから昼過ぎになって、私は水曜日に世話をするキノコ人の部屋へ向かった。いたのは小柄な男性で、部屋がジメジメしているのと、周りにキノコが生えまくっていること以外は普通の人間に見えた。
「初めまして、私はサツキ」
と名乗ると、人間に見えるキノコ人は口を開いた。
「初めまして、おんりーです」
声からして少し幼さがあるところ、他のキノコ人より若いのだろうかと思った。もっとも、キノコ人と人間が、同じように歳を取るのかどうかもわかっていないのだが。
「パッと見人間みたいだけど……貴方にも何か能力があるの?」
私はキノコ人の見た目や能力の記録も頼まれていたから、質問をしてみた。ある程度言葉が通じるなら、記録も進みやすいと思って。
「ああ……なら、食べてみます? このキノコ」
と言いながら、なんとおんりーキノコは頭から黄色いキノコを差し出してきたのだ。緑髪の中に隠れて生えていたみたいだ。
「えっと……ありがとう?」
おんりーキノコ人自身に毒がないのは把握済みだが、キノコに毒があるのか確認は出来ていない。私は黄色いキノコを手袋で受け取った。
「代わりに、タケノコをくれますか?」
「え、タケノコ?」
キノコ人がまさかタケノコを欲しがるとは思わず、私はつい聞き返してしまう。だがおんりーキノコ人は特段驚いた様子もないまま、こくりと頷いた。
「タケノコのお味噌汁が美味いって、前にドズルさんから聞いたんですよね。人間の本が読めるのはドズルさんだけなんで」
「そうだったんですね……?」
知れば知るほど、謎が深まるキノコ人だ。
私は観察記録に追記を書き込みながらさらに訊ねてみた。
「あと、昨日ぼんじゅうるさんから森が火事になった話を聞いたんだけれど、何か知っていることはある?」
すると、おんりーキノコ人から衝撃の言葉を聞いてしまう。
「森を燃やしたのはここの人間ですよね? なんでか分かんないけど、俺見ましたよ、火点けてたの」
「え……」