第4章 火曜日
「痛いことはしないよ。それとも、他に誰か違う人に何かされたことある?」
注射くらい誰かが打ったかもなぁと私は内心思いながらそう訊いてみると、ぼんじゅうるキノコ人がぽつりぽつりと話してくれたのだ。
「森が……燃やされたから」
「森が……?」
「俺たちは森にいたんだ。だから森じゃないところはもっと怖いよ」
「そうだったのね……」
私は視線を落として資料を確認する。そこには、生息地までは書かれてはいなかった。ただ、街の中で迷い込んでいたところを保護した、とだけ。
「今度、貴方が落ち着けそうなものを持ってくるね」
「落ち着けそうなもの……?」
「うん、だからそんなに怖がらなくて大丈夫」
「そうかな……」
でもまぁ、すぐに人馴れするのは難しいかもなぁ。パッと見人間だから忘れそうになるけど、彼はキノコ人なのだし。
「じゃあまたね、ぼんじゅうるさん」
と私が手を振ると、こちらを真似しているのか小さく振り返してくれた。