第4章 火曜日
火曜日はぼんじゅうるキノコ人のお世話の日。ただ水を渡すだけなのだが、他の生態を調べることも任されていたから、今日もクリップを片手にキノコ人たちの部屋へ向かう。
ただ、ぼんじゅうるキノコ人には毒があるという話なので、私は分厚い防護服を着て部屋に入った。ジメジメとした空間の中、頭に紫のキノコが生えたキノコ人が部屋の隅に座っていた。
「また来たの、白い人間……」
私と目が合うなり、呟くように喋り出したところ、どうやらぼんじゅうるキノコ人も知能は高いようである。私はドズルキノコ人と同じように、膝をついて挨拶をした。
「初めまして、私はサツキ」
「は、初めまして……」
とぼんじゅうるキノコ人は怯えながらそう返してはくれた。とはいえ私が近づくと逃げようとするので、距離は取った方がよさそうだ。
「一週間に一度、貴方のお世話をするために来たの。来週の火曜日にはまたここに来るよ」
とドズルキノコ人と同じ説明をしたが、ぼんじゅうるキノコ人の態度はあまり変わらなかった。人間不信なのだろうか。彼の過去には何があったのだろう。
「ここに水を置いておくから、しっかり飲んでね」
と私は餌置き場に水入りの器を置いて引き下がる。するとぼんじゅうるキノコ人がすっと背を伸ばして立ち上がった。あ、かなり背が高い。
「他に痛いこととかしないの?」
「え」
「あ、いや、ごめんなさい……」
私が何か答えるより早く、ぼんじゅうるキノコ人はまた身を縮めてその場に座り込んでしまった。だけどこのまま、彼を放って置けない気がした。