第13章 おらふキノコ人目線
「ねぇねぇ、だるまさんが転んだしましょうよ」
サツキさんと夜のお散歩に出ていた日。僕はずっと気になっていたことをサツキさんに言った。
カズさんの飼い主さんから聞いたんだ。人間の子どもたちの遊びなんだって。
僕らはもう大人だけど、サツキさんといつか別れることになるなら、思い出たくさん作ろうと思って。
サツキさんは少しびっくりしてたけど、優しく笑っていいよって言ってくれたんや。だから僕たちは、公園ってところに行って何回も何回もだるまさんが転んだをした。いっぱい走ったり止まったり、楽しかったな。
帰ってくると、サツキさんはテーブルに地図を広げて僕たちに色んな話をしてくれた。
「歩いたら遠いけど、こっちの方に山があって深い森があるの」とサツキさんは地図を指差ししながら言った。「みんなのいた森とは全然違うかもしれないけど、元いたところと近い生活は出来るかも」
これは、ドズルさんたちとサツキさんで何度も話してきた家出のことについてだった。僕たちはもう少ししたらこの家を出る。だって僕たちはキノコ人で、サツキさんは人間だ。元々は一緒に暮らしていなかったはずなんだ。
「でも、遠いんだったら、サツキさんとはあまり会えなくなりますね」
僕は言った。寂しいことだけど、ちゃんと言わなきゃいけないと思ったから。
「そうね……でも、みんな頭いいし手先も器用だから、どこでも暮らしていけると思うよ」サツキの言葉は心強かった。「MOBたちが楽しく暮らせる楽園、作って欲しいな」
僕たちがサツキの家を出る理由は、カズさんと一緒にMOBたちの楽園を作ること。具体的に何をどう作るかまでは考えていないんやけど、僕たちが研究所に捕まっていたみたいに、行き場のないMOBがまだどこかにいるんだと思うんだ。だから僕たちは、サツキさんの家を出ていく。この家の中じゃたくさんのMOBは入らないからね。ドズルさんとみんなで話し合って決めたことなんだ。
「それなんだけど……」と話し出したのはドズルさん。「サツキも一緒に来ない? 僕たちだけじゃ、どうしても難しいことがあるんだ」
「……え」
笑顔だったサツキさんの顔が、びっくりした顔になった瞬間やった。