第12章 おんりーキノコ目線
「あそこに、お店があるの」
「お店?」
「そ、お店で必要なものを買うんだよ」
「ふぅん……」
そんな感じで俺は、サツキにお店や買い物の仕方を教えてもらった。欲しいものをカゴに入れて、人間に紙を渡してようやく欲しいものが手に入る。紙を渡さないで欲しいものをお店から持ち出すと、俺は捕まってしまうらしい。
「あ、タケノコ」
「タケノコ?」
「そうそう、これがタケノコ」
そうしてサツキが見せてくれたタケノコは、透明の袋に入った薄緑の植物だった。思ったより小さいんだなと思っていると、これは人間が食べやすいように小さくしたからだとサツキが説明してくれた。
「買うにはちょっと高いんだけど……お使いの練習頑張ったから買ってあげるね」
別に俺は何も頑張ってないんだけどな、と思ったけど、サツキが嬉しそうならなんでもよかった。帰ったらタケノコのお味噌汁を作ってくれるそうだ。俺の話、覚えていてくれてたんだ。
後日、俺は一人で買い物に行くようになった。サツキの頼まれたものを買いに行くだけだったが、やり方や人間の食べ物を覚えてしまえば簡単だった。人間の食べ物については、ドズルさんから借りた人間の食べ物図鑑で覚えたし。
そうして、俺たちのいる部屋にも色んな物が増えてきた頃、ドズルさんが唐突にこんなことを言い出した。
「そろそろ、ここを出ていく準備をしようと思うんだ」
それもそうか。俺たちはキノコ人で、人間じゃない。そろそろ、そういうタイミングなのかもしれない、と俺は思った。