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こちら、キノコ飼育係[dzl]

第11章 ぼんじゅうるキノコ人目線


 俺はぼんじゅうる。キノコ人と呼ばれる菌類の一つらしい。
 まぁそんな人間が定義したものになんて俺にはよく分からないが、そんな人間の女の子の家で暮らしている。
 この人間は不思議な人間で、まず俺たちに優しい。別に研究所にいた時だって、嫌なことをするやつもいなかったが、楽しいこともなかった。
 だけどサツキは違う。家の中なら自由にしてもいいし、時々外にも連れ出してくれる。といっても大体夜とかなんだが、歩くのは疲れるから俺は大体部屋で寝ている。
 ただ、俺にも苦手なものがある。火だ。
 人間は食事をするのにあの恐ろしい火を使わなくてはならないようだが俺は嫌いだ。みんなは平気なようだが、あの火は俺たちの森を焼いた悪魔だ。俺にはあれが悪魔に見える。
 俺はほとんどを部屋の中で過ごすことで火を見ずに済んでいるが、ある日クッキーを焼いたと聞こえたので俺は寝たフリをしてやり過ごしている。火に関わるものは何も見たくなかったからだ。
 そんなある日の夜、開けっ放しのドアの向こうから何か音が聞こえた。なんだろうと出てみると、どうやら階段の上から聞こえる。
 最初はこの妙な坂に驚いたものだ。今では平気で登ることが出来るが、途中まで上がって思い出した。まさか、この先にあの悪魔がいるのではないか、と。
 俺はすぐに逃げ出そうとしたが、しまった。あの玄関を開けられないんだったと気づき、やはりどちらにせよサツキを呼ばなくてはと仕方なく階段を上がり切ると、そこには悪魔ではなく、彼女がいた。
 サツキだ。
「どうしたの……?」
 俺が思わず訊ねると、サツキは頬をこすってこちらを振り向いた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、それはいいんだけど……」
 夜は起きてるからそこはどうでもいいんだが。
 サツキの顔が濡れていた。
「顔、濡れてる」
 俺はサツキの顔に触れようとして手を引っ込めた。そうだった。俺は毒キノコで、人間には有害なんだった。
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