第8章 脱出劇
「ここから先は監視カメラがあるの。私が監視室の電源を切るから、そのあとここから脱出して欲しい」
私は、部屋から連れ出した五人のキノコ人に言い残して監視室へ向かった。監視室には警備員が一人いたが、適当なことを言って監視室から出てもらい、私が監視すると大嘘ついて電源を落とした。
ブーブーブー!
警告音が鳴り響く。ここまでは予想通りだ。監視カメラは24時間電源が点けっぱなしだ。切ると警告音が鳴るのは把握済み。
「すみません、監視カメラの電源が突然切れたんですが……」
切羽詰まった演技をして、警備員を呼び戻す。私はブレーカーを見てくると走り出してキノコ人がいた部屋へ戻ると、まだ五人はそこにいた。
「先に出て行っても良かったのに……」
と私が言うと、ドズルキノコ人がこう言った。
「僕たち、ドアの開け方が分からないんです」
そうだったのか。てっきり、見た目が人間とほとんど変わらないからある程度のことが分かると思い込んでいた。
「こっちへ」
私は代わりにドアを開けて外への経路を案内することとなったが、中央は大騒ぎだった。警告音が鳴ったことで避難すべきなのかどうなのかと混乱する人たちが多くいたのだ。
なので私は非常口へとキノコ人たちを連れ出そうとしたが、非常口には特殊MOB管理室を通らないといけなかった。この管理室は上位の研究員たちの中でも限られたところしか通れない。違う出口を、と私が踵を返した時、おらふくんキノコ人が握っていた何かを見せてくれた。
「これ、使えるんじゃないですか?」とおらふくんキノコ人が私に差し出したのは一本の鍵。「カオルって人間さんから、預かったんよ。もしものために使ってって。これがなんなのか僕はよく分からないけど」
カオル。そういえばその研究員は、時田カオルさんのことではないのか。時田カオルさんは優秀な研究員だったからこそ突然のクビで慌てる人がたくさんいた。もしかして、ここの鍵なのでは、と私が特殊MOB管理室の錠にそれを通すと、ガチャリと開いた。
「ここから逃げましょう。こっちにも出口があるんです」