第7章 金曜日
今日もまた、キノコ人のお世話をする前に資料探しをしてみた。今回はすぐに見つかった。記憶操作の研究資料だ。
まだ実験段階ではあるものの、確かにいくつかの記憶操作をする薬がこの研究所で開発されたことがあるらしい。だがどれも上手くいったことはないようで、研究物体は破棄されたようだ。
だが一つ、気になる箇所を見つけた。一部の記憶を消す可能性がある薬を紛失した、と。
妙な胸騒ぎがした。
とにかくまずはキノコ人のお世話を、といつも通り水の入った器を持ってある部屋へ入ると、すぐに大きな音が飛び込んできた。
ガン! ガン! ガン!
「ちょ、ちょっと、何してるの?!」
と思わず大きな声をあげると、そこにいたピンクのキノコを生やした人間が手を止めてこちらを見た。
「あぁ?」
怖い。
顔つきがいかにもって感じで、体格は私の二倍くらいはある。そのまま私は攻撃されるのではとつい目を瞑ると、先程とは打って変わって小さな声で、そのキノコ人は喋り出したのだ。
「ここから脱出しようとしていただけっす。俺、元々森にいたんで」
「森に……」
それは、今まで私が会ってきたキノコ人たちも口にした言葉だ。とはいえキノコ人の部屋には水とその入れ物以外持ち込めないはずだ。彼の持っている黒いソレはなんだろうか。
「あのー、MENさん……その持っているものは?」
「ああ、これっすか」とMENキノコ人は片手で持っている黒い何かを掲げた。「これ、キノコっすよ」
「え、それが……?」