• テキストサイズ

牧場物語へトリップⅡ

第15章 夏 十四日目


「ごめんなさい・・・私のせいで、こんな怪我させてしまって。」
「惚れた女を助けられたんだ。俺としては、上場だ。」
「フフ、トーヤさんらしいですね。」
「俺だからな。えっと、コーヒーだったな。」
「私も手伝います。」

お湯を沸かしている間、マグカップにインスタントのコーヒーを淹れていた彼。

「あ、あの・・・トーヤさんって、いつこっちに?」
「ん?そうだな・・・一か月前くらいになるか。」
「えっ、一か月?」
「自力で探さないといけなかったからな、サクラを。同じ町に住んでいるとは言え、縁があるなら必ず会えるってあの女神に言われて俺も承諾した。なぁ、サクラは俺に会いたかった?」

そう言ったトーヤさんの目は、不安で揺れていた。

「当たり前じゃないですか!!」
「そうか、当たり前か。たぶん、そう言うだろうと思ってはいたけど、やっぱり嬉しいもんだな。」

目を細めて笑うトーヤさん。

「こっちに来て一週間、寂しくて気が狂いそうだったって言ったらサクラは俺を笑うか?」
「えっ?」
「言葉通りに、サクラのいない日々は気が狂いそうだった。だからこそ、こっちに来た事は間違ってないと思えた。今日のサクラは、俺が突き放した後と同じ顔をしていた。それを見て、安心したって言ったら怒るか?」

私は首を横に振った。

「あ、湯が沸いたな。」

コーヒーにお湯を注いでは、ソファーに並んで座った。

一口、コーヒーを喉に流しては話し始めた。

「夏の十四日目、俺の工房に女神が来た。そこで、この世界のこと元の世界のこと、サクラの事を聞いた。頭が可笑しいことを言っていると思ったのに、でも、それを嘘だと決めつけることが出来なかった。女神は俺に言った。自分たちの愛し子を大事にする気があるのなら、サクラに免じて望みを叶えてもいいと。細かいことは割愛するけど、半信半疑だった時点で突っぱねられなかった。ただ、俺としてはサクラを失いたくない・・・それだけだった。女神が決めた規則が、俺自身がサクラを見つけること。不思議と、会える自信があった。サクラ・・・後はサクラが決めてくれ。」
「私が・・・何を?」
「俺の存在を許容するかしないか。」
「トーヤさんと離れたくない。ずっとずっと、死ぬまで一緒にいたい。トーヤさんが好き、大好き!!」

トーヤさんは私の絶叫に近い言葉を、嬉しそうに聞いてくれた。
/ 87ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp