第18章 もう一つの未来
俺がゲームのキャラから、生身の身体を得た時のこと。
女神と約束した。
もし、桜を裏切る様なことがあれば、元のゲームの世界に戻すのだと。それも、町に戻されて結婚した元婚約者との再婚ステージが待っていると。
元婚約者は、再会したあの時にどうやら旦那に浮気されたらしく離婚していたそうだ。その理由もあって、工房は傾いてしまっていたらしい。その工房の再建を果たすために、俺を利用するのだと言われた。
俺はそんな事にはならないと言っておいた。
桜は俺のことをよく見ているが、俺だって同じだ。そうでなければ、見られていることに気付かないだろう。
女神との約束で、桜に言えないことがあるけれど、俺は折角貰えた命を大事に桜の為に使っていこうと考えている。
手離しに可愛くて、愛してやまない大事な嫁と子供たちの為に俺は生きて行こうと思っている。
「・・・と、統也さん?あの・・・。」
「うん?桜のこと愛しているんだから、もっと愛し合いたい。俺をこんなにしたんだから、責任取るよな?」
「そ、そんな事言って・・・。」
「もっと、愛し合いたくない?俺は桜を、片時も離したくないんだけど。そうだ、桜からの執着も欲しい。」
「えっ、それって・・・。」
「キスマーク、付けてくれ。何処でもいいし、幾つでもいい。」
「も、もうっ・・・一度言うと引き下がってくれないんだから。」
俺の桜への気持ちの中は、全てが光り輝くものではない。執着し籠の中に閉じ込めてしまいたいと薄暗い思いも存在している。
そして、桜に甘えれば言う通りにしてくれる。首筋に二つ、胸元に二つと桜からの執着を得られてご満悦の俺がいる。
勿論、桜の身体にも俺からの執着は酷い。流石に、首筋に五つ付けた時は怒られたけれど気にしない。桜からの愛を得られる為なら、俺は何だってする。
その為に、世界を渡ってきたのだから。
だから、その覚悟を持って、お前たちの推しとの未来に備えて欲しい。
そうしたら・・・もしかするかもしれない。俺たちの様に。
おしまい