第14章 夏 十三日目
「サクラ、何か欲しいものあるか?」
「じゃあ・・・リング焼に苺飴、クレープもいいですね。後は・・・。」
「浮足立つのは分かるが、一つずつな?」
「トーヤさんは、何にしますか?」
「う~ん、そうだなぁ。かき氷は定番だよな。それに、揚げパン。中に肉餡とか色々入ってるのを適当に。・・・って、俺も大概浮かれてた・・・。」
「いいじゃないですか。折角のイベントなんですから。じゃっ「先ずは俺の欲しいものからって言うつもりだろうが、サクラの欲しいものが優先だからな?」」
先に思っていたことを言われてしまった。
「俺にくらい、少しは我儘を言え。」
「じゃあ、お腹すいたんでリング焼にしたいです。」
一緒に出店を回って、人の邪魔にならない場所で舌鼓。トーヤさんの手には、ツクネの串焼き。甘辛いたタレが掛かっていて、とても美味しそう。
「紫陽花亭の今回の出店も美味いな。あ、サクラも食べるか?」
齧りやすい様に串の先へとツクネを移動してくれ、私はそれに噛り付いた。
「んっ!!美味しいです。トーヤさんも、リング焼どうぞ?」
彼の口元に差し出すと、躊躇なくかぶりついた。
「うん、これも美味いな。後は、揚げパン。出店用だから、サイズ感もコンパクトで食べやすいな。あ、この肉餡もいい味だ。サクラ、口開けろ。」
トーヤさんに食べさせて貰って、私もご機嫌。
「後は・・・サクラの叉焼餡。んっ!!やっぱり、間違いないな。ホラ、サクラも。」
美味しいものを分け合って食べていると、花火が上がり出した。残りは持ち帰って食べることにして、二人寄り添って花火を見上げた。
穏やかで優しい時間。そっと彼に視線を向けると、直ぐに私の視線に気づいたのか目が合う。顔が近づいて来ると、無意識に目を閉じた。
好きな人との幸せな時間を、こうやって増やしていきたい。
町ほどの規模ではないものの、彼とのイベントは幸せな気持ちになった。やがて、花火が終わりそれぞれが出店に向かったり、家へと帰る者も。
「サクラ、どうする?」
「私は欲しいものは買えたんで、トーヤさんはどうしたいですか?」
「俺はそうだな・・・揚げパン、もう少し買っていきたい。」
「分かりました。」
二人で手を繋いで、揚げパンの出店に並ぶ。