第13章 夏 十日目
へインさんの言う通りだ。でも、悔しい。泣き寝入りだなんて。
「お前ら、難しい顔してどうかしたのか?」
「ボンさん。」
事情を話すと、大工らしく畑のサクに手を加えてくれることになった。四人で畑に戻る。
「これは酷いな・・・。無理やりもぎ取った証拠だ。よし、丁度いい廃材があるからそれを使って簡単に入り込めない様に柵を作ってやる。なぁに、いつもサクラには世話になってるんだ。これくらい訳ねぇよ。」
「サクラ、気を落とすなよ?俺も何か出来ることがあるなら言ってくれ。」
二人が私を気遣う言葉をくれる。
「サクラ、キアンに事情を話しておいた。畑には、今回使われないけどトウモロコシなどもう少しで出荷出来そうな野菜もあるだろう?二度目が無いように、こっちも危機管理はしっかりしておかないとな。」
「ありがとうございます、トーヤさん。」
「あんなに大事に育てて来たのを知っているからな・・・。」
労わる様に私の頭を撫でる彼。
早速、畑でボンさんが作業をしてくれる。
「なぁ、サクラ・・・サクラの人望は今更だから不問にするが、この人・・・ここを要塞にでもするつもりなのか?」
二人で呆然としながら、ボンさんが設置していく柵を眺めていた。先ず、通路から敷地内に入って来る時に、鐘の音が響くように設置。
更に、畑の周りを囲う背の高い柵。身長が百八十三センチのトーヤさんでさえ、その柵を超えるのが簡単ではないと言っている。
そんな状況で、野菜を盗んで持ち運ぶのは至難の業だと言っていた。これで、防犯になればいいなと願う。
「俺、手伝って来る。」
「じゃあ、私は軽食と飲み物でも用意して来ます。」
家の中に戻り、軽食と言って思い出した。
「ボンさんって、トウモロコシが好物だったっけ。そう言えば、毎年出荷依頼あったな・・・。」
「サクラ、ちょっといいか?」
「トーヤさん。どうかしました?」
「ボンさんに軽食の話しをしたら、トウモロコシがいいって言ってる。用意出来るか?」
「分かりました。」
「あ~・・・その、なんだ。正確には、トウモロコシって断定して、エヘッって言ってた。おっさんのその物言い、どうかと思わなくはないけどな。じゃあ、確かに伝えたから。」
再び、外へ出て行った彼。
トーヤさんの、エヘッはちょっと可愛かった。ボンさん、私に癒しをありがとう。