第12章 夏 五日目
「サクラ、着いたぞ。」
「んっ・・・トーヤさん・・・後五分。」
「いつもなら聞き入れてやれるんだが、今はダメだ。それと、そんなに疲れているのなら今日の採掘は禁止な?」
私は慌てて目を開けた。
「直ぐ起きます!!」
「ハハ・・・どれだけ採掘行きたいんだよ。さ、降りるぞ。」
私たちが一番最後に馬車を降りて、荷物が乗せられた馬車へと向かう。
「あれ?・・・私のバケツがない?」
「・・・サクラ、あの男、ぶっ飛ばして来ていいか?」
「えっ?あ、まさか・・・。」
「多分、間違いないだろ。最後まで嫌がらせかよ。」
「そんなに欲しかったんだ・・・あの人。」
「何を呑気なことを。」
「いえ、もういいです。そこまでして欲しいのなら、施してあげます。あれが全てじゃないし。」
イソイソとカバン開け、雲丹を捌いたものや貝類とその底に数枚の干し物用の魚を入れていたのをトーヤさんに披露する。
「これは・・・。」
「良かった、ひょっとしてと思って幾つかストックしておいたんです。代わりに、あのバケツの底は海岸で拾ったゴミを入れています。・・・それに気づいたら、怒るかなぁ。」
「クッ・・・アハハハ。策士だな、サクラは。笑わせて貰った。さぞ、怒るだろうな。じゃ、帰るか。」
家に帰るなり、収穫物を冷蔵庫に詰めては採掘へと向かう。
「なぁ・・・サクラ。ひょっとして、物凄く怒っていたりするのか?」
「えっ?」
「何だよ・・・今日の採掘数と種類。」
本日の採掘物・・・
ダイヤモンド十個、アメジスト五個、エメラルド八個、ルビー七個、オリハルコン三個、プラチナ八個、金三個、銀五個、サファイヤ三個、水晶二個
・・・である。
「怒ったりしていませんよ?私は採掘をする時は、いつもトーヤさんのことを考えているだけです。」
「そ、そうか・・・。」
「ん・・・今日は重いです。」
「そりゃあそうだろ。ホント、何処まで金の卵なのやら。俺が持つから早く帰ろう。」
トーヤさんに手を引かれて、私はご機嫌で自宅へと帰った。
「だ、だから、今日の採掘したものを全て俺に渡そうとするな。何で、そんな不服そうな顔をするんだ。えっ?売上の一割くれればいい?あのなぁ・・・。だから、サクラは俺に貢過ぎだ。って、何でそんな泣きそうな顔をする?ああっ、分かった!!売上の五割なら手を打つ。」