第12章 夏 五日目
うん、ゴリ押ししてみるものだ。トーヤさんの手間賃と私の素材提供の価値を同等として貰った。トーヤさんは原石換算みたいだけど、ウチには鉱石へと変えられる機材が完備。綺麗な鉱石にして提供しようと画策している。
「あ、そうだ。ひょっとして・・・アレを見たが為の嫌がらせだったのか?」
「アレ?アレって言うのは何ですか?」
「イベントの休憩の時に、キスしただろ?」
「えっ、あ、はい。」
「途中でアイツが見ていたのに気づいたから、思い切り見せつけた。サクラの顔は見えないアングルだったから、俺としては随分楽しませて貰ったんだが・・・。」
「み、見られていたんですか?」
「あぁ、ずっとサクラに視線向けていただろ?」
そんなの気付いていませんが?だって、私はトーヤさんしか見ていなかったし。
「で、あの、どうしてキスしようと?」
「ん?したいから?」
「それに、手付きも怪しっ!!んんっ!!?」
荒々しい彼からのキスに、間違いなく機嫌を損ねていたのは彼の方だったのだと思う。
「・・・可愛いな、俺のサクラは。さ、夕飯しっかり食べたら、その後はサクラを食べないとな。」
「えっ、き、今日は疲れていると思いますから・・・。」
「じゃあ、明日はキスだけにするから今日は楽しもうな?」
「た、楽しもうって・・・。」
「夕飯は、肉がいいな。後は・・・。」
もう夕飯の話しになっている。
夕飯後、彼と愛し合っている頃・・・あの告白男はと言うと。
「んだよ、ゴミじゃねぇかっ!!あの男か?あの男がこんな姑息な真似をしやがったんだな。」
全くの濡れ衣を着せられている。
「サクラとこれ見よがしにキスしやがって・・・。ドーエンのおっさんから婚約しているって聞かされたし、結婚も直ぐだって・・・俺の方が先にサクラを好きだったのに。」
薄暗い思いを抱きつつ、逆恨みまっしぐらの告白男。その思いの行く先は、自身の首を絞める結果となっていく。
「コラ、サクラ。まだ、終わってねぇだろ。」
「えっ?で、でも・・・。」
「サクラが足りねぇんだよ。もっと、サクラを愛させろ。いいよな?ま、拒否させねぇけど。」
全く以って、あの告白男は余計なことをしてくれたものだ。妙に彼に火を付けてくれた様で、この夜は中々離しては貰えなかった。