第10章 春 三十日目
「でも・・・急に好きなものって言われても、トーヤさんしか思い浮かばないです。」
「何かこれって・・・サクラを嫁に貰うまで続けられそうだな。嫌、嫁に貰っても同じか?」
「よ、嫁?」
「ん?嫌か?俺の嫁になるのは。」
「トーヤさんのお嫁さんにして貰えるのなら、私は何でもやります。何でも言って下さい。」
本気で遣りそうだ。
「相変わらず・・・俺の事が好きだな。」
目をキラキラさせて、俺を見ているサクラ。
「で、あの話し、忘れてないよな?」
「あの話し?」
「夜の営みの話しだ。」
あ、これは忘れていたな?目が泳いでいる。
「俺としては、もっと仲良くなりたいんだけどな?」
「もっと仲良く?」
「そう、もっと仲良く。」
何やら想像しては、生唾を飲んでいる。本当に分かりやすい。顔が真っ赤だし。
「自分から言えないなら、俺から誘ってもいいけど?」
「トーヤさんから?」
俺からの提案に、サクラは真っ赤になったまま思案している。あ、今度は顔色が青くなって白くなっていった。一体、何を想像しているのやら。
「言葉通りに、一から俺の身体を教えてやる。」
そう耳元で囁けば、生唾を飲んだサクラが再び真っ赤になった。想像力豊かで見ていて面白い。あ、頭から蒸気出てそう。
「アレも手取り足取りな?」
あ、サクラが耐え切れなくなったのか、顔を両手で覆った。そんなサクラの頭を撫でる。
でも、何か思いついた様に俺を見た。
「どうかしたのか?」
「トーヤさん・・・トーヤさんは、私に貰われたんでしたよね?」
そう言えば、あの時そう言った。ちょっとカッコ悪い事を思い出して心臓をえぐられそうになる。
「そ、そうだな・・・。」
「じ、じゃあ・・・私の事、トーヤさんが貰ってくれますよね?だ、だから・・・ご教授お願いします!!」
「ん?サクラの事は、とっくの間に俺が貰ったつもりだったけど。ご教授って?」
「トーヤさんのこと全てです。し、死ぬのは怖いですけど、私はトーヤさんの為なら何だって出来ると思うんです。だ、だからそんな・・・そんな悲しそうな顔をしないでください。」
今度は、サクラの眉が八の字になっていた。
悲しそう?俺、そんな顔してたか?
「トーヤさん?」
「ん?」