第10章 春 三十日目
「私はトーヤさん一筋ですから。」
何でなんだろうな・・・。俺の本心見透かすかの様な物言いに、俺は息を呑んだ。俺は過去の事で焦っていたのか?そんな事をしても、一度心が離れれば何の意味も為さないと知っているのに。
「まだ、足りない・・・。」
「えっ?」
「俺の為に、これからも俺だけを愛せよ?」
「も、勿論ですっ!!」
本当は、もっと重くなる言葉を言いたかった。でも、その言葉は飲み込んだ。サクラの事は、信じているし好きだと思っている。
たまに、こんな風に俺に踏み込んでくるけど嫌だとは思っていない。サクラは不器用なりに、俺に踏み込もうとしているのだろう。さっきは少し抉られたけれど、不問にする。
「あ、いたいた。お二人さん。間に合ったわよ?」
声を掛けて来たのは、服飾屋を営んでいるランさん。どうやら、サクラが依頼していたらしい水着が出来上がったらしい。俺の分まであるそうだ。
「トーヤくん、サクラちゃんの水着とってもいいものが出来上がったから楽しみにしててね?」
「えっ、あ、はい。」
一体、どんな水着なのやら。
サクラの服越しでしか体系は分からないけれど、たぶん、巨乳に違いない。そんな事を思っているなんて、言わないけれど。
イベントそっちのけで、サクラが纏う水着を想像しては見せて貰って少々気に入らなくなった。理由か?
あんなので、サクラの胸を隠せんの?そんな単純な思いから来るものだった。その思いは翌日も持ち越すことになるのだけど、俺はサクラの選択肢で妥協することとなる。
俺の水着は、品質のいい素材でサクラが出荷した材料から作られたものだと教えられた。身体は恥ずかしくはない程度には鍛えているし、素直に言ってサクラの水着姿は楽しみだ。
少しだけ夏が待ち遠しい。