第9章 春 二十五日目
二人で朝食を作って、二人並んで食事。少しずつ夏に近付いているのか、気温も温かくなってきている。
「サクラ、今日も採掘に行くのか?」
「はい。」
「即答だな。しかし、今日は祭りだろ?俺とデートしたくない?」
「したいです!!でも・・・。」
「分かった。祭りが終わってから、俺も付き合う。」
「はい。」
「いい返事だな。俺は店は休みにするから、サクラを手伝う。今日は何をするんだ?」
率先して手伝ってくれるから、思ったより早い時間に作業が終わった。出荷も終わらせたし、この後はデートだ。
因みに、三回優勝すると殿堂入りとなりイベントには観客として参加するだけになる。私は殿堂入りしているので、純粋にデートを楽しめる。
デートの為にお気に入りのワンピースに着替えて、トーヤさんが待つリビングへと向かった。
「お待たせ・・・」
トーヤさんも着替えていて、私の目は釘付けとなっていた。
「ん?あぁ、用意出来たのか。そのワンピース似合ってるな。可愛い。」
「ありがとうございます。トーヤさんも、いつも素敵ですけどより一層素敵です。」
「ありがとよ。さ、行くか。」
家を出ると、トーヤさんの手を掴む。しかし、恋人繋ぎに繋ぎ直されてしまった。ちょっと嬉しい。
「今日は料理イベントだから、食材の市も出ているんだよな?」
「はい。ウチからも色々と出しています。」
「それって、野菜以外にもって事か?」
「そうですね。ワインや加工品なんかもです。今回は、特製ヨーグルトも出品しました。」
「あのジャムを添えて?」
「はい。お好みで数種類出してます。」
「俺、買おうかな。」
「えっ?ウチにたくさんありますよ?それに・・・たぶん、買えないかもしれないです。」
理由は、他の住人からも楽しみにしてくれている人たちがいるから。
「そっか。じゃあ、そっちは他の住人に譲る。」
三十分後。私たちは、行列に並ぶ市の一角に来ていた。
「何だよ、あのピザ。」
「紫陽花亭で食べられるピザを、お祭り仕様として売り出すって言っていました。」
「今日しか食べられないってことか。」
更に三十分後。私たちは、イベント限定ピザに舌鼓。
「・・・美味い。」
「そうですね。今度、ウチで作りますか。」
「えっ?」
「えっ?」
「これ・・・ウチで作れんの?」
期待に満ちた目を向けられる。