第8章 春 二十一日目
「なぁ、サクラのこと教えてくれ。好きなもの、あ、俺ってのはナシな?」
「えっ・・・。」
「何だ、言おうとしていたのかよ。ハハ、ったく・・・サクラが俺を好きなのは分かったからそれ以外で。興味のあることやものとかでもいい。」
「う、う~ん・・・トーヤさん以外で好きなもの・・・う~ん・・・。」
「おいおい、何かあるだろ?」
今、最大限に目が泳いでいる。そして、私はこう言った。
「畑作業は好きです。あ・・・趣味は採掘?」
要約ひねり出した返答に、トーヤさんは目を丸くした後、豪快に笑いだした。
「あ~、笑わして貰った。何だよ、趣味が採掘って。でも、俺の為だったんだよな?あ~、この先一生サクラに頭が上がらない気がする。なぁ、サクラ?」
「何ですか?ちょっと、笑い過ぎだと思うんですけど。」
「嫌、誰だって笑うだろ。俺さ・・・サクラに一生好きでいて貰える様に頑張るから。余所見なんかするなよ?」
「余所見の可能性って、トーヤさんと全く同じ人が現れない限りあり得ません。」
「サクラ・・・俺の事好き過ぎるよな。嬉しいけど。」
食事の後、トーヤさんは出荷の用意なども手伝ってくれ、男手がある事に感謝した。
「サクラ、何処に行こうとしてんだ?」
「養蜂箱です。そろそろハチミツが収穫出来そうなんで。」
「養蜂まで手掛けてんのか?」
今回二つ増やした養蜂箱に上手く居ついてくれて、ハチミツの収穫が増えた。琥珀色の綺麗なハチミツは、倉庫に保管。
「何か、身体が元気になった気がする。さっき試食したハチミツの恩恵か?町で出回っているハチミツはあまり好きじゃなかったんだけど、アレは別格だな。」
アハハ・・・ローヤルゼリーですから。言いませんけど。
「なぁ、サクラ。家の裏側にある小屋?あれは何?」
「キノコを栽培している小屋です。」
「キノコまで?見てもいいか?」
「いいですよ。」
一般的なキノコの種類が、ゲームと同じく栽培中。
「お昼にでも、焼きキノコでも食べますか?天ぷらでもいいですね。」
「えっ、食べる。」
二人で収穫しては、新しく栽培準備もしておく。
「ここで暮らしたら、食って大事なんだなって実感した。」
「そうですね。」
昼食も一緒に作って、一緒に食べる。トーヤさんの心地いい声が私の耳を潤してくれる。ホントにいい声だ。