第8章 春 二十一日目
身支度を整えてから、朝食の用意。一人暮らしが長かったとのことで、トーヤさんも家事全般は一通り出来るそうだ。ウチのキッチンで、二人で朝食の用意をする。
「ハハ・・・俺のこと、見過ぎだろ。」
「ご、ごめんなさい・・・。無意識でした。」
トーヤさんが鍋の中を掻き回しながら、私の頭を撫でる。どうしても、私の目はトーヤさんに向いてしまう。これが無意識だから、私自身どうしようも出来ない。
「しかし、サクラが作るサンドイッチって・・・えっらい豪華でカラフルだな。それに美味そう。一切れ食べていい?」
食べやすいサイズに切り分けたサンドイッチをトーヤさんの口元に差し出すと、そのままかぶりついた。
「んっ!!美味いな。」
トーヤさんが機嫌良さそうに笑っている。その事がたまらなく嬉しい。
「あ、そうだった。俺にもサクラの仕事、手伝うから色々と教えてくれよ?後は、生活の取り決めとかもあるよな。幾らなんでも、男で年上でもある俺が彼女に生活の全般の面倒を見て貰うのはカッコつかないからな。」
「分かりました。あ、あの・・・良かったら、今日のお昼から採掘に行きませんか?その前に、出荷の用意と野菜の種蒔きもやりますけど。」
「分かった。」
トーヤさんの申し出により、対外的な支払いを一手に引き受けてくれることになった。折半でいいと言ったのだけど、どうしても聞き入れてはくれなかった。その代わり、食品は自由に飲み食いしてもいいと言うことにした。
元々、手先が器用な人だったので、機材で色んなモノづくりもやってみたいと言われお願いすることにした。
「あ~、外でまさかこんな優雅に朝食を食べる日が来るとは思わなかったな。天気がいいし爽やかだし可愛い彼女が目の前にいるし。それに、飯が美味い。」
「トーヤさんが作ってくれたスープ、とっても美味しいです。野菜の甘が引き立ってて本当に美味しい。」
「俺のは手習い程度だ。でも、気に入ってくれたのは嬉しい。ただ・・・何なんだ?俺もそこそこ手先が器用な方だとは思っていたけど・・・まさか、大抵のものがサクラの手作りだとは思ってなかった。それに、ライムの果実水のライムの味が最高に美味い。俺が好きなの知っていたのか?」
攻略本に載っていたとは言えない。
「こ、小耳に挟んだだけです。」