第8章 春 二十一日目
「ん?何か温かい・・・。」
「こら、サクラ。俺の身体を撫でまわすな。朝から抱くぞ?」
ん?いい声が至近距離から聞こえる。目を開けると、直ぐ傍にトーヤさんの顔があった。
「ミッ・・・。」
「ミッ?」
「ミヤアアアアアアっ!!」
どうして、この言葉が出たか分からない。でも、朝から騒々しい私の口を塞いだのはトーヤさんの唇だった。
「落ち着いたか?」
私は何度も頷いた。昨日は、一度に色んな事があった。ゲームでは知ることのなかった、トーヤさんの過去。そして、恋人となって直ぐに同棲。
更に、同じベッドで寝ることになったこと。トーヤさんの要望のまま拒否なんて出来る訳もなく。これが、惚れた弱みということだろうか。そうなんだろうな。
って、何か中々キスが終わらない。それどころか、全然軽くない。更に、手付きも怪しい。
「サクラ・・・その気になったら、俺に言って?流石に、付き合って直ぐに事を運ぼうとはしないから。それに、俺はサクラを囲う為なら何だってするつもりだ。分かったか?」
「は、はい。」
「素直。可愛いな、俺の彼女は。」
トーヤさんの言おうとしている事が、どういう意味か分からないほど子供じゃない。でも、その気になったらってなったとして、どう伝えればいいの?
「あ~、何かスッキリしたら腹が減った。」
「何か作り・・・ど、どうして裸体なんですかっ!!」
「いつもは全裸だ。今回は気を使ったんだぞ?」
「全裸・・・。」
「その内、全部余すことなく見せてやるよ。」
チラッと見ると、綺麗に筋肉のついたいい体をしている。
「サクラ・・・。」
再び、キスをされる。
「あ、あの、こんなにキスするものなのですか?」
「するだろ。恋人同士なんだから。」
そうなのか。そういうものなのか。嫌ではないけど、ちょっと恥ずかしい。
「なぁ、サクラ。あんな事言われたのに、本当に俺で良かっ「いいに決まってますっ!!」」
被せ気味にそう言い切った私。どれだけ必死なんだか。
「どれだけ俺を好きなんだよ。もう、今の様な言葉は吐かない。ありがとな、俺を好きになってくれて。」
「凄くいいことを言っている様に思うのですけど、手付きが怪しいです。」
「ん?あ~、すまん、無意識だった。でも・・・サクラが可愛いのが悪い。それに、俺もただの男だったって事だ。許容しろ。」