第7章 春 二十日目
サクラは、驚いた顔をして俺を見ていた。
「だからって、あんな風に傷つけていい理由にはならない。本当に悪かった。って、何で泣くんだ。俺、また何か余計なこと言ったか?」
「トーヤさんが泣かないから私が代わりに泣くんです。トーヤさん、辛かったでしょう?ううん、辛かったし悲しかったんです。トーヤさんが悪いのじゃありません。」
そう言って潤んだ目で、俺を見ているサクラ。
「辛かった?そうか・・・俺っ・・・。」
あの日から、俺は俺を責めていた。俺が悪いのだと思って来た。そんなヤツが被害者面なんて・・・そう思っていた。
止めどなく溢れる涙。ずっと、心の痛みに蓋をして心の片隅に追いやって生きて来た。それが解放され、確かな痛みとして向き合えた瞬間だった。
サクラは何も言わず、俺に寄り添ってくれた。一頻り泣いた後、気分はスッキリした。
「情けないところを見せてしまったな。俺のこと幻滅しただろう?」
「しません。トーヤさんは、当たり前のことをしただけです。悲しい時は悲しいって思っていいんです。男性だからって、泣いちゃダメってことはないと思います。言いづらいことですのに、話してくれてありがとうございます。」
サクラは、俺に礼を言う。
「正直言って、あの時から人を信用出来なかったんだ。でも俺・・・色々心の中で葛藤が正直言ってあるけど、それに反して今ここで行動しないと後悔することも分かっている。」
「どういう事ですか?」
「間違いなく、この先、サクラ程信用出来そうな相手は現れないと思う。」
「信用?」
「あんな事をした俺のことなんて、もう何とも思ってないかもしれない。だけど「そんな事ないです。」」
サクラは言葉を被せて来た。
「そんな事無かったから、私は動けなかったんです。」
「俺・・・サクラのこと、好きになってもいいか?」
「えっ・・・えっ?す、好き?」
「って言うか、もう八割くらい惚れてる。何んなんだよ・・・俺、こんな単純だったっけ?でも、サクラのこと見てたら、不信感も嫌悪感も馬鹿らしく思える。俺の本能が、サクラを受け入れてしまえって言っている。だから、俺を貰ってください!!」
ん?貰ってください?俺、貰ってくれって言った?あ、サクラの目が真ん丸になって、次の瞬間真っ赤になった。