第7章 春 二十日目
あ、また泣き出した。面白いことに、自分で頬を抓りながら、夢?夢?って何度も口にしている。でも、次に続いた「死ぬほど嬉しい・・・」と言う言葉に、俺はサクラを抱き締めていた。
「あぁ・・・俺って、淡泊だったし溺愛とかそういうの理解出来ないって思って来たけど、今、理解した。なぁ、サクラ。俺と付き合って?」
腕の中で、サクラは小さく頷いてくれた。久しぶりに心の中が温かくなった。
「サクラ・・・。」
顔を寄せ、キスをすればサクラは硬直並みに固まった。そんな事に気付かない俺は、深いキスをして意識を飛ばしたサクラにやっと気付き慌てふためいた。
「えっ?サクラ?えっ?あ、意識飛ばした?俺・・・がっつぎ過ぎた?」
そのまま抱き上げると、壁側にあるソファーに下ろしては頭を撫でた。隣りに腰を下ろしては、自分の方に寄り掛からせた。
「今度は同じ轍は踏まない様にしないとな。」
暫くして、寝ていた事に気付いた俺。視線を感じ隣りを見れば、食い入る様に俺を見ていたサクラ。
「見過ぎだろ。まぁ、そういうところも可愛いけど。」
「えっ、か、可愛い?」
「可愛いよ、サクラは。」
「それって、子供扱いしてます?」
「そんな勿体ないことするか。俺は、サクラとSEXもしたいからな。」
俺のセリフに、アワアワしているサクラ。ホント、擦れてなくて可愛い。
「なぁ、サクラ。」
「な、何ですか?」
「ここに、引っ越してきていいか?同棲したい。」
「ど、ど、同棲っ!!?」
「そう、同棲。次はしっかり囲おうと思っているから。他の男に目移りなんかさせないし、近づけさせたくもないからな。仕事は工房でするけど、サクラと一緒に暮らしたい。」
「えぇっと・・・何時から?」
「ん?今日から。」
「き、今日っ!!?」
「恋人同士なんだからいいだろ?サクラも、俺を独り占めしたくない?」
もう一押しだ。
「可愛い彼女と一緒に暮らしたい。なぁ、サクラ・・・。」
顎を掴み顔を寄せれば、「わ、分かりました・・・」と、真っ赤になったサクラが了承の意を示してくれた。
「あ、あの、分かりましたから・・・。」
「キスしていい?俺とのキス、嫌?」
「い、嫌なんかじゃ・・・。」
「次は、意識飛ばしてくれるなよ?」
必死になって俺に応えてくれようとするサクラに、俺は久しぶりに心の底から幸福感を感じた。