第7章 春 二十日目
紋章・・・。
「なぁ、毎日って・・・。」
「言った通りだ。毎日、採掘に行っている。そのお陰か、サクラの採掘してくる原石の質もレパートリーもかなりのものだ。おかげで、ウチの店が潤えるくらいに。」
「何で・・・俺なんだろうな。」
「それ、自慢か?ぶっとばすぞ?この村でサクラの存在は大きい。真面目で勤勉で人懐っこい。サクラを嫌う住民なんぞ、ここにはいない。お前がサクラに興味がないと言うのなら、俺が欲しいくらいだ。」
「俺は、ただ・・・。」
「理由がアレだからか?それとも年齢がネックなのか?じゃあ、お前は一度失敗したらそれで人生終わりだと思っているのか?サクラは、いい子だ。俺も他の数人の住人もサクラのお前への気持ちは知っている。そうでなければ、今頃、村から追い出されてるぞ。」
村から追い出されるって、どれだけこの村で愛されてんだよ。いや、あの日俺を見るキラキラした目は、本当に綺麗だった。俺を好きだと言う言葉に、嘘はないのだと思う。
「俺の話し、聞いてんのか?」
「聞いてる。激しく後悔しているところだ。」
「それは良かった。後悔していないって言うのなら、俺もお前をこの村から追い出さないといけないところだった。何せ、俺はお前のせいで商売あがったりだからな。」
「ぐっ・・・。」
「少しでもサクラに悪いことをしたと思っているのなら、今すぐにでも謝って来い。あの子は本当にいい子だ。それに器量もいい。確実にお前がサクラに気が無いのが分かったら、周りは放っておかない。それも踏まえて、対応しろ。」
もう一度、店に並ぶ鉱石に目をやる。
「ストーン・・・悪かったな。」
「俺に謝罪は必要ない。これでも、友達だと思っているんだからな。俺のことはいいから、サッサと謝って来い。許してくれるまで、ウチには出入り禁止な。」
そんなの、実質開店休業になるだろ。そう思ったが、これも俺に対する叱咤激励だと思う事でストーンの言葉に頷いた。
店を出て、サクラの家へと向かう。この村を下見に来た時、サクラのところも訪ねた。丁寧に育てられた作物が庭一杯に並んでいて、大事に育てているのが伺えた。
家は一人暮らしにしては大きく立派なものだ。サクラの名前を呼びながら、何度も扉を叩く。しかし、何の反応もない。住民たちが訪ねても、何の反応も無かったと言っていた。だから、俺は少し意地になっていたのだと思う。