第5章 春 十日目
そうだ、お祭りとはいえあのメモの確認はしておかないといけない。一度家に戻って・・・その後、何故か恒例の洞窟へと来ていた私。
「やっぱり、何か採掘やっておかないと気持ち悪いから。」
言い訳じみた言葉を吐きつつ、いつもの様に採掘開始。夜には皆で目印の桜の木に向かってお祈りをする時間までに戻ればいい。
推しの為!!
さて、今日の成果。
プラチナ五個。金三個。銀五個。ルビー五個。エメラルド三個。そして、オリハルコン三個。
「いいのかなぁ・・・こんないいものばかりで。」
袋に詰めては家へと戻る。
ん?誰か、来てた?
少し離れた場所に、後ろ姿の一人の人が見えた。何処となく見覚えのある様な雰囲気。でも、それが誰なのかウチのお客だったのかは分からなかった。
原石を機材に入れて、宝石へと変えていく。ウチにもあるんだ、この機材。物凄く高価だったけれどね。
「このルビー、すっごく綺麗。宝石にしてから出荷すると、金額が跳ね上がるんだよねぇ。今回はこれを出荷しようかな。」
そう、今回のメモに宝石での出荷依頼があったんだ。さて、村のご神木の桜の木へと行かなくちゃ。桜の木に到着した頃には、辺りは暗くなっていた。
ほんのりと桜の木が光っている様に見えると、皆がお祈りを始めた。誰もが今年一年健やかに過ごせます様にと。
「女神様、いつもありがとう。」
(どういたしまして)
そんな優しい声が聞こえた気がした。
お祭りが終わり、家へと帰ると追加のメモが挟まっていた。
「アメリカンドッグ・・・これ、きっとルイ村長だな。そうか、売り出して残らなかったんだ。仕方ない。もう少しだけ働きますか。明日は小麦の種蒔きだな。」
お祭りの為に自身の好物を提供したルイ村長の為に、私は夜遅くまでアメリカンドッグを制作したのだった。
あのアメリカンドッグ、桜の花の焼き印を付けていたっけ。ちょっと可愛かったな。
その後、入浴後はベッドに入るなり、泥のように眠ってしまったのだった。