第5章 春 十日目
初の村のお祭り。桜は満開で、祭りを楽しむ人たちの目を楽しませていた。そう言えば、昨日は中々の騒動だったな。
昼過ぎに訪ねて来たのは、ルイ村長。明日の為に依頼していた加工品の幾つかが、町の悪天候で届かなくなったんだ。色んな家を回って協力を仰いでいたらしいのだけど。
加工品は機材がないと作ることが出来ない。その機材は、結構なお値段と材料も必要で町からの配達に依頼を出していたそうだ。ウチにある加工品、まぁまぁいいお値段で引き取って行ったルイ村長。何度もお礼を言われて馬車の荷台に乗せて持って行ったっけ。
「あ、あのハムステーキって、ウチのだよね。香ばしいいい匂いがする。マスタードも付属として付いている。うん、食べよう。」
焼いていたのは、役場で働くルイ村長の娘であるリンさん。一枚お願いすると、お礼だと言って二枚お皿に乗せてくれた。金髪碧眼の美人さんだ。
飲み物は、紫陽花亭で果実水を売り出していたのでチェリー味のものを選択。近くのベンチで早速舌鼓する。
「ん、やっぱり間違いない。美味しいなぁ。」
「サクラ、随分、美味そうなもの食べてんな。」
「キアンさん、こんにちは。」
この人は、村のおまわりさん。二十七歳の細マッチョで、これまたイケメンさん。フルーに次いで、人気のあった存在だ。
「おう、こんにちは。サクラはいつも元気だな。」
「キアンさん、二枚あるんで一枚どうですか?」
「えっ?貰う。でも、いいのか?そんな美味そうに食べてんのに。」
「あ~、このハム・・・ウチが卸したものなんで。」
「サクラんとこのか。なら、尚更、食べないって選択肢はないな。いただくよ。」
あっという間に無くなったハムステーキ。
「やっぱり、美味いよなぁ。よし、追加しよう。おっ、アメリカンドッグもあるじゃないか。じゃあ、サクラ。ごちそうさん。」
キアンさんって、肉料理が好きだったっけ。
「おや、サクラさん。こんにちは。」
「こんにちは。リンクさん、雑貨屋のお店は今日はお休みですか?」
「えぇ、そうですよ。ウチの娘も待っているので、店の方にも遊びに来て下さいね。」
物腰の柔らかい雑貨屋の店主。娘のミアとお店を切り盛りしている仲良し親子だ。
リンクさんと別れ、村を回って行く。あちこちで酒盛りをしている人たちもいて、本当に楽しそうだ。