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彩雲の糸

第2章 2.一歩目


 しかし、明くる日も彼らは私の元へやって来た。今度は昼休みに教室まで迎えに来られた。
「え? 断ったよね?」
「さん、小学校からバレーをやってたって北川第一出身の子に聞いたんだよね」
 菅原くんがニコっと歯を見せて笑った。屈託のない笑顔が逆にしんどい。

「いや、もう辞めたの。ごめん」
 ――あぁ、嫌だ。忘れたいのに。
「え? もったいない」
 ――違う。
「とにかく、辞めたの。もうやらないの。マネージャーも向いてないと思うから! だから! ごめん!」
 ピシャっと教室のドアを閉めて彼らを遮断した。その様子にクラスメイトたちが驚いていた。

「あ、思いっきりドア閉めてごめんね。力が有り余って……」
「あははは! さすが!」
 クラスメイトたちは笑ったけど、私は本当は怒っていた。バレー部の彼らに対してではない。自分に、だ。

 何を逃げているんだ。あんなに好きだったものを、どうして一生懸命忘れようとしているんだ。頭では分かっていても、心が追いついて来なかった。

 翌日も、彼らはめげずにやって来た。今度は理科室への移動の途中だった。
「あのさー……」
 ため息交じりにそう言いかけた。もういい加減にして欲しい。
「ごめん! やっぱりちゃんとさんと話がしたくて」
 澤村くんが頭を下げた。慌てて他の2人も頭を下げた。どうして、そこまでするのだろう。
「……何で?」
「さんのことが気になるから。バレーが嫌いに見えたから」
 図星だけど、他人に嫌いと言われるのも癪だな、と思った。自分でも自分を難しい奴だなと思う。
「……そっか。そう見えるよね」
「だからさ、今日俺たちの部活、見に来ない?」
「え、いや……」
「決まり! 待ってるね!!」
 菅原くんが爽やかに手を振って、3人はそそくさと帰って行った。あまりの強引さに開いた口が塞がらない。
「、行ってあげたら? あれだけ頭を下げてたし」
 友達はそう言った。行ったほうがいいと私も思った。頭を下げて3日間私の元に来てくれた誠意には答えないといけないのかもしれない。
 少なくとも、つっけんどんな断り方をしたことは昨日から反省していた。だからちゃんと誠意を持って断りに行こう。
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