第2章 2.一歩目
高校2年生になった。
1年生の初夏まではリハビリ通いをしていたが、今はもう普通に走ることが出来るし、体育の授業も受けられる。
私は失った青春を取り戻すべく、たくさん遊んで過ごした。放課後や休日に友達と遊びに行くことは部活漬けだった私には刺激的で、部活のない人生も結構楽しいんだな、と思った。
7月のある日の放課後。友達と駅ビルにあるパンケーキを食べに行こう、と話をしながら歩いていると、突然呼び止められた。
「さん、ちょっといいかな」
「え?」
男の子が3人、私の前に立ちはだかっていた。
「な、何ですか……?」
真剣な顔をしていた彼らに、ただならぬ気配を感じ一瞬たじろぐ。彼らの顔は知ってはいた。特に2人は隣のクラスだ。
「俺、バレー部の澤村って言うんだけど。こっちは菅原。怖い顔してるのは東峰」
「怖いって言うなよ……」
(いや、怖い)と心の中で突っ込んだ。
そして「バレー部」という言葉にズキンと心が痛む。
「……何か用です?」
嫌な予感はしていた。バレー部が私に用があるということは、バレー絡みの話であるのは明白だった。
「マネージャー、やらない?」
「え?」
「さん、部活やってないって聞いて。今、うちの部はマネージャーが1人しかいなくて大変なんだ。で、よかったら……」
マネージャー?私が?
握っていた拳に力が入った。息が苦しい。ここから早く逃げ出したかった。
「……ごめん。他、当たってくれるかな」
「そっか。気が変わったら声かけてな」
予期せぬ出来事に、心臓がバクバクとうるさかった。
私はすっかりバレーを日常から排除し、第2の人生を歩んでいた。今日のことがきっかけで、またバレーを思い出してしまう。それが怖かった。
「マネージャー、いいじゃん。モテそう!」
呑気な友達はそう言った。
「バレーって大変そうだしヤダよ。さ、パンケーキ食べにいこー!」
この日食べた有名店のパンケーキは、正直楽しめなかった。味すらも覚えていない。私はあの男の子たちを恨んだ。