第10章 10.彩雲の糸
やがてホイッスルが鳴り、我に返ると、勝利したことを確信した。
「うわああああああ!!」
勝った……。春高に行ける。
澤村たち3年生が抱き合って泣いていた。本当に、本当によかった。
不遇の時代を過ごした3年生。烏野が地に落ちた時代に入学し、監督がいない中、環境にも恵まれない中、自分たちで考えて練習をして来た。
腐らずに、諦めずに頑張って来てよかった。心から彼らを祝福する。
「私をマネージャーに誘ってくれてありがとう」
「それを言うなら春高終わってからにしてよ!」
私も3年生の輪に加わり、抱き合って泣いた。これからも、このメンバーで夢の続きが見られることに心から感謝した。
その後、表彰式を終え、打ち上げをして帰宅し、私はこれから徹に会いに行く。打ち上げを途中で退席した私を飛雄は見ていた。たぶん、私がこれから会いにいく相手のことも分かってるだろう。
一区切り付け、ようやく気持ちの整理が出来た。
昨日の試合後、徹のほうへ駆け出したかった。すぐにでも負けた苦しさを和らげてあげたかった。それだけで、自分の感情の正体を知るには十分だった。
私が指定したのは北川第一中学校前。施錠されていて入れなかったけど、体育館前に近づくことが出来た。
卒業して以来、初めて見る中学校。
(うん、大丈夫だ)
前に進めている。気持ちに応えない理由は、もうない。
「中学校のことを考えるのも嫌だったんだけどさ、最近はそうでもないんだ」
「……そうなんだ」
私たちは正門に寄りかかる。すっかり肌寒くなった秋の夜は、肌に当たる冷気が火照った身体には心地よかった。
「中学は何も変わってないみたいだね」
「……ここで終わらなくて良かった。はちゃんと続いてるね。まさか春高にほんとに行くなんて」
徹は空を見上げた。これまでのことを思い出すかのように、星を見ていた。
「うん。あの体育館から……バレーを簡単に諦めて、あれから私は時が止まっていた感覚だった。でも、もう大丈夫みたい。諦めたその先でこんな素敵な経験が出来るとは思ってなかったよ。遠回りしたけど、バレーにちゃんと関われてる」
「春高、おめでと。」
「うん……ありがと」