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彩雲の糸

第9章 9.最後の戦い


「徹には試練が多すぎるよ……」
 飛雄や牛島という天才たちも、徹も、ただバレーが好きという気持ちは同じなのに。この仕打ちは酷すぎる。これから先の人生は輝かしいものでありますように。私はそう願いながら、徹の手を握り続ける。
「……徹はずっと頑張って来たのを私は知ってる。高校の試合はこれで最後だったけど、これで終わりじゃない。バレー人生はまだまだ長いよ」
「……」
「これから先の長い人生は勝とう。勝ちまくろう。私、徹を支えられるように頑張るから」
「それってどういう……」

「右膝。痛めたことがあるでしょ?」
 徹の右足のサポーターは左足の黒いサポーターとは別のものを使っている。それは保温効果のある白い医療用サポーターなのだ。前回の試合ではたまたま付けていたのかなと思ったけど、今回も白いサポーターを付けていた。慢性的な症状なのかもしれない。
「あ、そういうことか」
 徹は苦笑いをした。ちょっと残念そうな顔をして。
「……だから」
 私は徹の手を握ったまま、力をこめる。
「明日、話がしたい。今は試合に集中させて」
 翌日は白鳥沢戦がある。今は現を抜かしている場合じゃない。そんなの、烏野のみんなに失礼だ。
「……分かった」
「また連絡するね」
 私が足早に烏野の集合場所へ戻ろうとしたら、徹が後ろから私を呼び止めた。
「ありがとね。烏野のことも、白鳥沢のことも応援出来ないけど、のことは応援してる」
「ってことは烏野の応援をしてくれるってことね!」
「違うってば!」
 徹らしい物言いに、つい笑顔になる。私は徹に手を振って急いで集合場所へ戻った。
 今日は仮面を外してあげたい。だけど、それをするのは青城の仲間たちであるべきだ。岩ちゃんたちにそれを託そう。

 その後、学校に戻ってからは、以前からマネージャー3人で作成をしてきた、白鳥沢のデータを分析をした書類を選手たちに手渡した。
 マネージャーとして出来ることをしたいと、合宿のときに話していたものだ。明日、みんなの力になれたらいいなと願っていた。
 飛雄とは話さなかった。今は余計な情報を与えるべきではない。私は飛雄と日向、仁花ちゃんが居残り練習をしている姿を見守っていた。本当は早く帰って身体を休めるべきだけど、あと5分くらいは練習をさせてあげよう。私に出来ることはそのくらいしかなかった。
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