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彩雲の糸

第9章 9.最後の戦い


 悩ましい日々が続く中、ついに春高代表決定戦がやって来た。あれから、飛雄は特に変わった様子も見せずに黙々と練習に取り組んでいて、ほっとしたところはあった。
 条善寺戦にも、澤村の負傷により交代でコートに入った縁下が活躍を見せた和久谷南戦にも勝利し、いよいよ3回戦。青城との試合が始まる。
 試合開始前からみんながピリピリしていた。無理もない。前回は全力で挑んで負けた相手との再戦なのだから。
「俺、及川さんに勝って宮城で一番のセッターになります。それから、絶対日本一になります」
 試合前、いつも通り私の荷物を持ってくれた飛雄はロビーで宣言した。
「うん。頑張れ! 次こそ勝とうね」

 今日は勝ちに来た。だけど、どうしたって徹のことは気になってしまう。そんな私とは対照的にこの日の徹は私の方を見ることなく、ピースしたりすることもなく、試合に集中していた。絶対に負けられない戦い。それは烏野も、青城も一緒なのだ。
 私は監督、コーチと共にベンチに入る。相変わらずの強気な表情の徹を間近で見た。きっとたくさん練習してきたのだろう。でも、烏野だって、この数か月でものすごく進化した。

「あの敗北を越えてこい!」コーチが全員を送り出す。

 試合開始のホイッスルが鳴った。
 初っ端から仕掛けられた徹の大砲のようなサーブを、怪我をしたばかりの澤村が何とか上げ、これまでに練習してきた成果を遺憾なく発揮し、徹のサーブを1本で切った。
「すごい、よく見えてる!」
 青城と互角にやり合っている。この4か月で成長したんだと実感する。
「日向、決めろー!」
 日向が前回ドシャットを喰らった過去を払拭するかのような一撃をお見舞いした。
「ナイスキー!」
 だけど、青城も負けてない。すぐに策を考え、完璧に対処する。そして、ローテが周り、再び徹の殺人的なサーブ。
「!?」
 ドンッ!と、床に打ち付けられるボールのものすごい音がした。アウトになったものの、これまでに見たことのない威力だった。私なんかが当たったらタダではすまなそうだ。
 それに加え、あと少しで烏野がセットポイントというタイミングで青城はメンバーチェンジをした。背番号16番。初めて見る選手だ。ガラが悪く、これまで見た青城のメンバーにはいない風貌だ。
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