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彩雲の糸

第8章 8.トライアングル


「さんに対する気持ち、自分でもよく分かってなかったんですけど、最近先輩に言われたんです。それは好きってことだよと」
 ……菅原だ。こういうことを言うのはあいつしかいない。飛雄は続ける。
「気が付くとさんを目で追っていることや、笑ってる顔がいいなって思ったり、仕事を手伝いたくなったり、バレーをしてくれたのが嬉しかったり……これが、好きってことなんだって分かったのは、最近なんです」
 自分の気持ちをゆっくり伝えてくれる飛雄。心がじんわりと温かくなった。
「ありがとう。飛雄が一生懸命私に話しかけたり手伝ってくれたり、嬉しかったよ」
「でも、さんは及川さんのこと……」
「どっちも大切だよ。徹も飛雄も。それ以上でも以下でもない。ごめん、私、今混乱してる」

 こんなの、誰にも相談できない。というか、あんなイケメンふたりに好きと言われた私は、人生の中で持っている運を全部使い切ってしまったのではないだろうか。明日、天罰が下るなんてことはないだろうか。
 どっちも大切に想っているのは本当だ。だから困るし、悩む。
 いや、私に必要なのは感情の整理だった。ふたりに対する感情が、友情なのか愛情なのか、尊敬なのか、このときの私はとても混乱していて、整理が難しかった。

「次の試合、及川さんに絶対勝ちますから」
「飛雄には次も負けないから」
 2人からもらったメッセージに何と返すべきか、その日はずっと勉強に手がつけられずに夜遅くまで考えていた。
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