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彩雲の糸

第8章 8.トライアングル


 な、何が起こっているんだ。驚きのあまり目を白黒させて動揺した。
「な、な、な、なん……」
「うん、知ってる」
 徹は試合のときに見せるあの真剣な表情をして言った。
「行くよ、」
「あ……」
 徹は私の背中を押して、歩き出す。飛雄は黙ってその場に立ち尽くしていた。

 お互い、しばらく無言で歩いていた。だけど、先に口を開いたのは徹だった。
「さ、飛雄のことを好きなんてこと、ないよね?」
「い、いや……後輩だと思ってる……」
「そっか。飛雄の気持ち、気が付かなかった? めっちゃ分かりやすかったと思うけど」
 徹は少し余裕がなさそうに言った。笑顔の仮面が外れていた。
「ううん……。そりゃ、よく仕事を手伝ってくれるし、一緒に帰ったりもするし、でもそれは小学生からの知り合いっていう仲の良さから来るものだと思ってた」
「そっか。やっぱりそんな感じだったんだね。隙を見せちゃだめだからね。」
「うん?」
 徹は立ち止まり、私の両肩に手を置いた。
「俺、本気でのこと好きだからね?」
 徹の手が置かれた肩から熱を感じる。熱を帯びた真剣な瞳から、逃げることなんて出来ない。私も徹の目を見て答えた。
「うん……伝わってるよ……」

 悩みの種がまた増えた。なぜ受験生で忙しいときにモテ期がやって来るのだろう。その後、帰宅後に飛雄から「話がしたい」と連絡をもらい、夜に、私の家の近くの公園で会うことになった。
「飛雄……」
 飛雄はベンチに座って待っていた。禍々しいオーラを放って。いつも気合が入ると出ているオーラだった。私が来たことに気が付くと勢いよく立ち上がった。
「さん。さっきは口走ってすみません。先にさんに伝えるべきでした」
 飛雄は90度になるまでペコリと頭を下げた。
「いやいや、謝ることじゃないよ……その……本当?」
「はい。さんが好きです」
「……!」
 改めて言葉にされる。どこか嘘なんじゃないかと思っていた節もあったが、やっぱり嘘ではなかった。
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