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彩雲の糸

第8章 8.トライアングル


「……俺のこと、嫌い?」
 徹が私の顔を困り顔で覗き込んだ。嫌なことを聞かれた。そんなこと聞くのはずるい。私は首を横に振る。
「……じゃない」
「よかった」
 徹は安堵した。ほっと胸を撫でおろして「嫌われるのが一番しんどい」とヘラリと笑った。
「そう言われる気はしてたんだよねー。でも、俺は一度から離れたことを後悔してるからね。簡単には引かないから」
「え……」
「……付き合うことで、悩みは分かち合える。そうは思わない?」
 徹はなぜか私を説得にかかってきた。なぜこんなにも食い下がるのだろう。
「まぁ、そうだね。確かに」
「前も言ったけど、俺はにそばにいて欲しいし、一番に応援したいし、して欲しい。だから、どんなことでも頼って欲しいんだけどな」
 その優しさに一瞬目が眩んだ。手の届くところに徹はいる。だけど手を伸ばすことが出来ずにいた。だから、私はようやくどうしても気になることを聞いた。
「なんで私なのかな……。3年間も離れてて、一体私の何が良いのか分かんない」
「え? 全部だけど」
「は、はい?!」
 仰け反って手がグラスに当たり、中身を溢しそうになった。すんでのところで徹に助けられた。
「中学の頃からだって言ったじゃん。頑張り屋で、好きなことをやってるときの笑顔が昔からめっちゃ可愛かった。今もたくさん考えて将来のことを考えてるを応援したいよ」
「うそ……」
「だから、俺のこと嫌いじゃないなら、もう一度考えて欲しい。高校を卒業したら離れ離れになるとしても、そんなの関係ない。俺はじゃなきゃ嫌だよ」
 徹の真剣な目。その目に嘘がなんかないと思った。徹から目を逸らすことが出来なかった。
「私ってそんなに頑張り屋に見える? 頑張ろうと思ったのは最近だし、それもたまに後ろ向きになって、立ち止まったりするような人だよ」
 徹のように本当にすごい奴に好かれるような人ではない。でも、徹の言葉は嘘ではなく、決して遊ばれているとも思えないから苦しい。
「は自分を信じることが出来ないんだね。でも大丈夫だよ。俺、洞察力はあるつもりだから」
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