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彩雲の糸

第8章 8.トライアングル


 そうして部活と勉強の毎日を過ごし、気が付くと、徹に告白されてから1か月が経ってしまっていた。
「このままずっと待ってたら、老衰で死んじゃう」
 徹から冗談交じりのメッセージを受信した。さすがに待たせすぎだよな、と思ってはいた。
 部活にと勉強だけでもいっぱいいっぱいになっている私が誰かと付き合うなんてことは、やっぱり出来ないのかもしれない。きっと、そうだ。
「ごめんね。今度の月曜日、会えるかな」とようやく私は観念をした。いや、解放されるために行動したのだ。

 この日は烏野も部活がなかったため、徹に会うことになった。今回は、徹は学校まで迎えに来なかった。校門が騒ぎにならず安心した。
 私たちはカフェに行くことになった。目的のカフェがあるケヤキ並木をゆっくりと歩く。過ごしやすい気温になってきたし、風が心地よい。
「気持ちいいねぇ」
「ほんと、いつの間にか秋になってたね」
「は受験勉強どう?」
「周りの部活をやってない人たちと比べたら大幅に遅れてるよね」
 私はアイスカフェラテ、徹はアイスコーヒーを注文した。どうやって切り出そうかなと思っていると、徹から話題を振ってくれた。
「俺さ、大学受験も考えてたんだけど、やっぱり高校を卒業したらプロを目指そうと思ってる」
「え……」
「ブランコ監督のいるチーム、声がかからなくてもトライアウトを受けようと思ってる」

 ホセ・ブランコは幼い頃から徹にとってのスター選手。そして立花レッドファルコンズの監督だ。
「す、すごいね。そしたら、大阪か……」
 ガツン。すごいと思う反面、ショックを受けている自分に気が付いた。
「そうだね。でも、だからって付き合わない理由にはならないからね!」
「あ……」
 本題はそっちだ。自分の気持ちの整理がつかないまま、ここで結論を出さなくてはならない。
「お待たせしました」と私たちの前に飲み物が置かれた。私はすぐに一口飲み、気合を入れ直した。
「部活のことと受験のことで頭がいっぱいで、余裕がなかった。ほんと、ごめんね。こんな状況の中で付き合っても、徹を傷つけたりするかもしれないから、やっぱり無理かも」
 よし、言ったぞ。ちょっと徹の顔は見れないけど、どうか伝わって欲しい。
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