第7章 7.王子様の告白
徹は相変わらず鋭い奴だ。私のことをいろいろと分かっているのが怖い反面、理解されていること自体は嬉しかった。私は、理学療法士にはリハビリだけでなくケガを予防するために働きかけることが出来ることを説明した。
「やりたかったスポーツを諦めないように、誰かの力になりたいなって思ったんだよね」
「そっか。でも、も諦めるには早いよ」
その通りだ。自分が諦めておきながら、誰かに「諦めるな」なんて軽率に言ってはならない。そう言われた気がした。
「……そうだね。大学ではバレー、やってみようかな……」
「うん! いいね。これからもちょっとずつ一緒に練習しようよ」
「え、一緒に?」
何で?と聞こうと口を開いたとき、徹は突然、私を抱きしめた。
「え? えっ、と……」
突然のことに混乱する中、徹の爽やかな香水の香りを感じる。
私の背中に回された腕から、緊張の色が伝わった。
「好き」
「!?」
「中学の頃から好きだよ。俺と付き合って」
決して私をからかっているわけではない。本当に、そう思ってくれているんだ、と伝わった。
「返事は今度でいいから」
「う、うん……」
やがて、徹の身体が離れる。燃えるように身体中が熱くなり、私は徹の顔が見られなかった。
「こう見えても、ずっと前から言おうと思ってたんだよ。たくさん辛いことがあったのに、あの時は何も出来なくてごめん。本当にごめん……」
「い、いいよ、そんなの。私から離れたんだし、今はこうして元気だし!」
苦しそうな徹の表情を見て、思わず徹の顔を覗き込む。徹も苦しんでいたのかな。胸が締めるけられる思いだった。
「頑張ってるがやっぱり好きだよ。俺も、これからもバレー頑張るからさ。これからもそばでを応援したいし、出来れば、俺のことを一番に応援して欲しい」
「……うん……ありがと。ちゃんと考えるね」
裏表のない徹の言葉。徹の気持ちは素直に嬉しかった。
ただ、こんなにも華やかな王子様の彼女になりたいと思ったことはなかった。もちろん、嫌いなんかじゃない。むしろ好きだ。友達であり、同志、そんな気持ちだった。