第7章 7.王子様の告白
その後、帰り道に公園を見つけた徹は「ちょっと寄ろうよ」と言った。小さな公園には人はおらず、僅かばかりの遊具があるだけだった。
「あ、ボールだ」と徹がゴム製のボールが落ちているのを見つけた。
「、出来る?」
「うん」
「えっ」
徹は自分から誘ったくせに目を丸くして驚いた。前に会ったときから随分と考えが変わったのだから、驚くのも当然だろう。
「ミニソフトバレー、小学生以来だ。懐かしいな」
「めっちゃ飛ぶな、これ」
日向、飛雄に次いで、今度は徹とも対人パスをする。
「ちゃんと出来てるじゃん。どうしたのさ、急に」
「……私だって少しずつ変わってるんだよ」
「そうだけど、びっくりしたよ」
「そっか」
しばらく緩めのパスを続けていたのに、徹がいきなりスパイクを打った。ボールが柔らかい分、僅かな力でもスピードが上がる。
「ちょっと、力加減!」
「でも取ったじゃん。さっすが!」
「あはは。まぁね」
(……あ、今、私笑った)
気がついてしまった。
私、バレー、やっぱり好きなんだ。
楽しいとは思っても、好きかどうか、明言を避けて来たところがあった。一度諦めた身。好きという言葉を軽々しく言えなかったからだ。
だけど、その気持ちを無視することはもう出来なかった。
「……徹。私さ、大学は東京に行こうと思う。理学療法士になろうと思うの」
「えっ」
「この知識があると、スポーツリハビリトレーナーとしてプロのバレーチームに携わることもできるみたいなの」
徹はボールを止めた。そして私にゆっくり近づいた。
「私、バレー、ちゃんと好きみたい」
「そうだよ。がバレー嫌いになるわけない」
「でも最近決めたことだよ。バレーを諦めてしまった後悔がそうさせたのかな」
徹は目を細めて笑った。その嬉しそうな表情に、私も胸が温かくなる。
「のケガをした経験がそうさせたんだね。そしてマネージャーを通して、選手を支えてきたこともあるのかな」
「そうかも。親にも先生にもまだ言ってないし、理転することになるし、具体的な話はまだなんだけどね」