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彩雲の糸

第7章 7.王子様の告白


 そろそろ花火が始まる、ということで私たちはたこ焼きや焼きそばを買い込み、花火の見える場所へ移動した。
 その途中、徹ファンの女の子たちに遭遇して焦ったりしたけど、徹はこの日は営業スマイルはなく、あっさりと対応していた。同じ学校の子じゃなくてよかった。見つかったらまた噂が立ってしまう。
「ほんっと、いつもいつもモテモテだね」
「あはは。ありがたいね。みんな及川さん目的で試合にも来てくれるしね」
「へー、王子様だねぇ」
 私は皮肉のつもりで行ったものの、徹は「まぁね」とピースをした。言われ慣れているんだな。日向の言葉を借りると、バレーをしている姿は大王様なのに。
「そこは否定しないのか……岩ちゃんに怒られればいいのに」
「もう怒られてるよ、毎日。それはもう理不尽に!」

 夜空に大輪の花が咲く。視界いっぱいに次々に花火が打ち上げられ、火の粉となって散っていく。花火は赤や青、緑へと色が変化し、周囲から歓声の声が聞こえてくる。
「綺麗だねぇ、魔法みたい」
「ほんと、すごいね」
 急に徹の視線を感じる。変な顔してた?青のりでもくっついてた?と心配し、徹を見上げた。
「ん、何?」
「の表情がコロコロと変わって面白い」
「え、はずっ」
 面白い顔をしていた私とは対照に、光に照らされた徹は、悔しいけど美しかった。

 花火が終わり「帰ろうか」と歩き出した。
「飛雄の面倒を見てくれてありがとうね」
 飛雄の件のお詫びとして今日はこうして会っているつもりだ。だけど徹は何も返さずに黙り込んだ。
「え? どうした?」
「さ、飛雄とはどうなの?」
「へ? 別に何もないけど、何で?」
「ううん。そういえば最近、烏野はどう?」
 徹は話題を変えたけど、それ以上深追いも出来ないので、詮索はしなかった。
「こないだ、合宿を2回したんだ。いい感じになってきているよ!」
「おおっ。俺たちも負けずに頑張ってるけどね」
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