第7章 7.王子様の告白
普段は部活以外では降ろしている髪の毛も、ヘアアレンジの動画を見ながら入念にセットし、お小遣いで買った化粧品でしっかりとメイクもした。
「張り切ってるみたいじゃん……」
いやいや、女の子と出かけるときもこのくらいめかし込んでいた。今日はそれと変わらない、と自分に言い聞かせた。
「―!」
徹は待ち合わせしていたバス停の前で手を振った。徹も私服だった。部活が終わって、一度家に帰ったのだろう。白Tシャツに黒パンツにグレーのスニーカー。シンプルだけどとっても似合っていた。
「の私服って中学以来。可愛い」
「え、あ、ありがとう」
内心照れながらも、平然を装った。
思えば、こうして出かけることは久しぶりだった。部活や勉強の毎日な中、こんなに多くの人が集まる楽し気なところに行くのは、気分がちょっと上がる。
徹を見上げると、目が合った。「ん?」と首を傾げて私を見る。
「こういう所に来たの久しぶりだ」
「俺もだよ」
「遊んでいそうな見た目だけど、根っからのバレー馬鹿だもんね」
「え? 今の褒め言葉? 悪口?」
「正直な感想だよ」
「どっち!?」と困った顔で笑う徹。中学の頃を思い出す。ケガをする前の楽しかった頃。
徹は今も周りの人たちにいじられて、愛されてるんだろうな。先日の試合でも、そんな様子が見て取れたし、昔っから徹は輪の真ん中にいる人だ。
「……懐かしいね。徹は変わったようで、変わってないところもたくさんあるね」
高校に入って更にモテるようになって、宮城では注目される選手になって、バレーの雑誌にも載って、華やかな人生を謳歌している徹が眩しすぎた。だけど、話していると、やっぱり根は変わってないことに安心した。
「は変わったよ」
「えー? どこが?」
「ちゃんと前を見て歩いてるから」
「そっか……」
塞ぎ込んでいた2年間と比べたら、そうだ。澤村たちのおかげでまたバレーに関われたのだから。
「そっか。そうでありたいね」