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彩雲の糸

第7章 7.王子様の告白


 合宿の翌日。疲れた身体はそう回復するものではなかった。この日は11時に起床し、母が昼食を作っている最中にパジャマ姿でキッチンに向かった。
「おはようー」
「おはよう。お疲れだったのね。早く顔を洗って着替えておいで」
 寝ぼけながらご飯を食べて、ふわふわした気持ちのまま、受験勉強を開始する。なぜふわふわしているのかと言うと、今日の夜、徹と会うからだ。
 徹はデートと言っていた。あんなチャラチャラした奴だし、デートなんて誰にでも平気で言えるのかもしれないけど、私にとっては人生で初めてのことなのだ。
「きっと深い意味はない。女の子と会う日のことをデートと言ってるんだ。うん、そうだ」
 無理やり結論付けて、勉強に集中することにした。

 ……とは言ったものの、なかなか気持ちの切り替えは難しい。私は気分転換に大学案内をパラパラと眺め始めた。

(こういった技術でケガを未然に防ぐことが出来たら、救われる人って、たくさんいるんだろうな……)
 合宿を経て、思ったことがある。ケガをした人を助けることが出来たら。ケガの予防が出来たら。私みたいな人を助けることが出来たら。

「理学療法士……」
 私がリハビリのときにお世話になった人たち。
ネットで調べると、スポーツ分野で活躍する理学療法士は、リハビリだけでなくケガを予防するための取り組みもするらしい。
「これだ」
 はっとした。妙にストンと腑に落ちた答えだった。

 今からでも受験可能だろうか。文系の私が理系の大学に受験可能か調べてみると、生物や数1・数Aでも受験可能な大学もあるようだ。きっと、理転は出来なくはない。
 あとは先生や両親に相談をしてみよう。私は理学療法士についてネットで夢中になって調べていった。

 時間はあっという間に過ぎ、そろそろ出かける時間だ。
 お祭りと言えば浴衣なのかな、と思ったけど、張り切るのも恥ずかしい気がしてしまい、普段の格好で行くことにした。とはいえ、今持っている服の中では一番気に入っているものにした。制服のスカートよりもうんと短い白のショートパンツ、シャーベットカラーのシースルートップスにシルバーのスニーカー。ちょっとした乙女心だ。
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