第6章 6.小さなきっかけ
1回目の合宿から2週間後、2回目の合宿がやって来た。今回は6泊7日で場所は埼玉の森然高校だ。
今回は夏休みに入っている分、長い合宿ができる。合宿が始まるまでは自主練習に励んできた。飛雄もコーチに新しいトスを提案され、私もボール出しを手伝ってきた。やっていることのレベルが高すぎて、もはや中学生レベルの私にはもう何も言うことはなかった。ただただボール出しを精一杯やることくらいしか手伝ってあげられなかった。
みんなが変わりだしているのは、マネージャー陣も気が付いていた。何か出来ることはないだろうかと、夜の自主練習では、マネージャー全員がボール出しを積極的に手伝った。ふと第3体育館を見ると、あのやる気のなさそうな月島も音駒と梟谷の主将たちと自主練習をしていた。どんなきっかけだったんだろう。ちょっと感動した。
「潔子ちゃん。私さ」
「うん?」
「これまでにつけた記録。これらをデータベースにしようと思う」
「すごい! いいね」
私たちが練習や試合でつけている手書きのノート。もしかしたら、メンバーひとりひとりの記録、相手チームの記録をもっと見やすくまとめたら、いろんな角度で分析できたら、みんなの役に立つかもしれない。
「仁花ちゃん、魅せ方が上手だから、ぜひアドバイスをお願いね」
「は、はい!」
普段のマネージャー業以外でもっと役に立ちたい。そう思えるようになったのは、先日の青城戦が相当悔しかったから。みんなの悔し涙が忘れられないから。
とは言ったものの、パソコンなんてめったに触らない。パソコンの使い方は、父に教えてもらおう。
それから、今回の合宿では生川のコーチにテーピングを教わった。指に関するテーピングは経験があったけど、足については恥ずかしながらそこまで詳しくなかった。
「捻挫を予防するテーピングもあるんですね」
「ええ、奥が深いですよね」
中学のときにも知ってたら、もしかしたら……と一瞬頭によぎった。
「こういった技術でケガを未然に防ぐことが出来たら、救われる人って、たくさんいるんだろうな……」
自分の口から自然に出た言葉は自分でも意外なほど心に深々と焼き付いた。