• テキストサイズ

彩雲の糸

第6章 6.小さなきっかけ


 いよいよ東京・梟谷学園グループとの1泊2日の合宿。飛雄と日向は勉強の甲斐なく赤点となり、補習後に田中のお姉さんの力を借りて合流するという。飛雄は頭が悪いイメージはないけど、勉強は嫌いなのか、興味がないのか……。谷地さん改め、仁花ちゃんが「せっかく教えたのに……」とショックを受けていた。

 合宿には5校のバレー部が参加していた。ドリンクから備品の準備、洗濯まで、自校の分だけではなく人手が足りなければ他校のものも手伝う。仁花ちゃんは特に初めてのことだらけでちょっと大変そうだったけど、一生懸命頑張ってくれた。目の回る忙しさで1日が終わった。
 部員たちはこの短い合宿で次なる課題を見つけていた。成果のある合宿だったと言えるが、日向と飛雄は何か衝突をしていた。
 私は気になり、帰りのバスに乗る前に飛雄に話しかけてみた。
「……あいつ、速攻のときに目をつぶるのをやめるって言ったんです」
「そうなの?」
「あの速攻は日向の最大の武器だから、少しのズレは致命的なミスになるんです。だから、これまで通りでいいと俺は考えています。それよりも、他の技術を磨くべきなんですよ。あのボケ」
 日向は自分のその武器では歯が立たないことを実感していた。だから変わろうとしているんだ。
「そっか。飛雄の言うことも分かるけど、日向にも考えがある。ちゃんと話し合った?」
「いや……」
「他の人の考えもちゃんと聞いてみた方がいいんじゃないかな」

 そんな会話をした翌日、あろうことか飛雄は徹に相談したらしい。徹からのメッセージでそれを知った。
「甥っ子のお迎えをしたときに突然飛雄が現れてさ」
「え……大丈夫? ちゃんと先輩らしくしてあげた?」
「なんで敵の助けなきゃいけないの……まぁ、思ったことは言ったよ」
 徹はセッターとして大切なこと。攻撃の主導者はスパイカーにあることを伝えた。私はちょっと感動した。敵に塩を送る行為をした徹は腐っても先輩なのだ。
「偉い! 烏野高校のために、ありがとね!」
「いえいえ、今度デートしてくれたらそれでいいよ!」
「デート!?」
 合宿から帰ってきた翌日、徹と仙台市内の夏祭りに行くことになった。徹の周りには可愛い女の子がわんさかといるはずなのに、何で私なんだろう。とはいえ、断る理由もないのでOKした。
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp