第5章 5.烏たちの涙
「はぁ……」
私は、何でいつもやることが中途半端で、後悔ばっかりしているんだろう。
突然気になった。
中学のときに貰った色紙。後悔しかない中学時代。自分が不甲斐なくて、他人の自分に対する思いを見るのが怖くて、読まずにしまった色紙。
恐る恐る、ウェアやシューズと共にひっぱり出した。
「うわぁ、懐かしい……」
当時の思い出が一気に甦る。ぶわっと当時のコートでの光景が蘇る。
私は意を決して色紙に目を通した。
「いつも明るく、優しく声をかけてくださり、ありがとうございました♡」
「先輩のスパイク、すごかったです! これからも怪我を治して頑張ってほしいです!」
「いつもプレーがかっこよかったです。尊敬してます!」
「また、先輩とバレーがしたいです!!」
「リハビリ頑張ってください! 負けないで!」
たくさんのあたたかいメッセージ。誰も私を非難することなく、その優しいメッセージに涙が流れた。
今から頑張っても遅いのかもしれない。だけど、今始めないと絶対に後悔する。過去に勝たないと、前に進めない。
本気の選手たちにちゃんと寄り添えるように。
進路のことも考えるように、と先生からも親からも言われてはいたけど、勉強を疎かにしないことを条件に、私は部活を続けることを許された。
翌日、昼休みに潔子ちゃんと廊下でばったり会い、一緒に澤村たちの元へ今後の話をしようと教室へ向かった。その時、ちょうど澤村たち3人がベランダで話しているのが見えた。
「俺だって、まだやりてぇよ。お前らとまだバレーしてぇ!」
澤村がそう言った。菅原も旭も、同じ思いだった。
「ちゃん」
「うん」
私たちに出来ることを。そうして、私たちは次世代へ繋ぐためのマネージャー探しが始まった。
放課後、体育館を覗いてみた。今日は部活がない日。それなのに、部員もコーチたちも、全員が体育館に集まっていた。それが自然だったかのように。
私はそんなみんなが大好きだ。
私たちは、誰一人欠けることなく集まった全員で気合を入れ直す。敗者からの躍進の一歩目を歩み出す。
私たち3年生のラストチャンス。次に目指すは春高だ。