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彩雲の糸

第1章 1.夢の終わり


 次に気が付いた頃には飛雄と徹が担架を運んで来てくれて、私はそれに乗せられていた。
「痛いよぉ……痛い……」
 注目を浴びる恥ずかしさよりも、痛さが勝る。そして、今後起こることを即座に理解して泣きじゃくることしか出来なかった。


 その後、病院で診断名が言い渡された。
「前十字靭帯損傷……」

(お母さんが青ざめているなぁ)
 私はなぜか俯瞰して診察室で起こっていることを見ていた。まだ現実を受け止めきれていなかったんだと思う。ただ茫然と、診察室の先生の机の引き出し当たりを見つめていた。

(入院して手術を受けるのか。しばらく松葉杖なんだ。半年から1年程度はリハビリが必要なんだ。あ、中総体、出られないのか)

 中総体、出られない……徐々に意識が自分に帰ってくる。

「――中総体、出られないんですか……」
「そう、ですね」
 お医者さんの無機質な声。まるでロボットみたいだった。
「バレーは、もう出来ないんですか?」
「リハビリを頑張れば、80%の人は以前のように動けます」
 みんなが元に戻れるわけじゃない。その事実を知り、電気を打たれたようなショックを受けた。

「私、中総体を頑張って、新山女子に入って高校でもバレーやりたいんですけど……」
「残念ですけど、中総体は出られません。まずは手術とリハビリを頑張りましょう」
「今頑張らないと……最後の試合、勝たないと……」
 急に涙で視界が歪む。痛いからじゃない。自分の愚かさを悔いていた。
「、お医者さんを困らせちゃダメよ……」
「お母さん、ごめっ……うわぁぁぁん」


 それから、私は5日間の入院をし、手術を経て退院後は安静とリハビリのために学校を2週間休むことになった。
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